いとさん・こいさん ~ 10月の花童
まずはサムネイル代わり、
花童の いとちゃん・こいちゃん(姉娘・妹娘)
大阪では、姉妹のことを「いとさん」「こいさん」と呼ぶ。いとさんは「いとしいお嬢さん」の略だ。その妺が「小さい いとさん =こいちゃん」。三人娘だと、真ん中が「なかんちゃん」となる。四人姉妹だと末っ子を「こいこいちゃん」と呼ぶ……らしい(諸説あり)
10月14日、湧々座の花童。公演後、ファンの一人、Kさんが言った「あかねちゃん、良く務めましたね」ーーーこの日、二人のお月さま(月若さん、月桃さん)が欠席、あかねさんが最年長だった。つまり、良く務めた、は「あかねさんの いとさん振りが立派だった」という意味だ
花童は小学生から高校生まで年令が様々。この娘達の踊る姿、その情緒を見ていると、勝手に「いとさん・こいちゃん・なかんちゃん」とそれぞれ呼んでみたくなるーーー例えば、小さかった ゆりあちゃんも今はすっかり いとさんで、かなちゃんは なかんちゃんから いとさんに差しかかった辺りかな、という具合に
さて、湧々座10月の定期公演、演目はこちら
『花の猩々』秋バージョン
あかね・ゆりあ の年長さんが厳かに舞う。私は知識がないが、これは古典の舞いであろう
そして第3部での『藍の海』
胸に十字架
これはキリシタンの哀しみを伝える曲
そしてーーー『小原庄助さん』
教養のない私でも、さすがにこれは知っている。そして、この曲を踊る時の二人の表情が明らかに違う
曲調を理解し、それに合わせて感情を作っている。年令を重ねて、この娘達の心の成長も感じられる。見事な いとさん振り である
かつて(と言っても私はYouTubeで観ただけ)あかねちゃんは幼い頃から のっぽさんで、ゆりあちゃんは背が低くて丸っこかった。今はゆりあちゃんの背丈がグンと伸びて、二人並ぶとどっちがどっちか分からない
ーーーということは無くて(笑) 私の眼には、あかねちゃんはマジメな学級委員
ゆりあちゃんは元気な運動部員に見える
『高砂の浦』
9月の湧々座公演は台風で中止。10月、どうしようかな、と迷っていた。正直、熊本往復はしんどいのである。そんな時、玄宅寺での9月公演がYouTubeでアップされた
いとちゃん・こいちゃんがペアで踊っている!
姉妹二人での演目、これほど本格的なのはおそらく初めて。玄宅寺は他の公演に向けてのお試し会の意味合いがあるから、近々演るはず……次の公演って……湧々座だ!
かくて矢も楯もたまらず熊本に向かうこととなったのである
『炭坑節』は、いと・こいコンビにあやかちゃんを加えて三人で
炭坑節は東京の盆踊りでかかる曲、トップ3に入る。何しろ東京人は炭坑節が好きなのである。本場福岡県の田川市とコラボして、延々と炭坑節を踊り続ける「日暮里 炭坑節まつり」なんてのもある
炭坑節はその名の通り、働く姿を表現した曲。花童の労働歌では『田の神』が名作だが、これは早乙女が田植えをする曲。『炭坑節』は石炭を掘って掘って、モッコで担いで、トロッコを押す、という振り付け。この娘達のモッコを担ぐポーズ……
たまらん(笑)
さて、あやかちゃんはもうー曲、戦前のお座敷歌謡『 ゆるしてネ』をソロで踊る
お座敷歌謡といえば、こわらベには十八番の『お座敷小唄』『芸者ワルツ』があるが、この曲はちょっと曲調がおとなしすぎだなあ
あやかちゃんは振りの大きな踊りが持ち味だから、明るく手拍子『ステテコシャンシャン』あたりを踊らせたら楽しいな、と思う
かな・れいな・すずは『月は宵から』
同じお座敷歌謡でも、この曲の方がアップテンポで乗りやすそう
明るいウソ泣き(笑)
お次は『松花江千里~ケッチョン』。みことちゃんと踊るのは、湧々座初登場の ここねちゃん踊りはまだ固いが、みことちゃんが一緒だと舞台に安定感が出る
この日のトークコーナーで、みことちゃんがまだ12歳、花童入団3年目だと知って、今更ながら驚いた。この娘は幼い頃から踊りの素養があり、かつての嘉恵さん・希海さんのように「第3のザ・わらべ」として入団したのだと思っていた。そして月若さんから今回の ここねちゃんまで、実に多くの相方とペアで踊りを披露してきた。身体が大きい分、年令よりも落ち着いた頼れるキャラに見られてしまう。それも大変だろうな、と思う。その一方で、この娘は花童と後に続く娘たちを繋ぐ「なかんちゃん」なのかも知れない、と思ったりもする
『ドンドン民謡』ーーーあのドンドン民謡を こわらベだけで演じる……そんな時代が来たんだね
これは全国の民謡メドレー。賑やかでタイナミック、花童総力戦!という演目だ
そしてトリは定番、『くまもと音頭』
観客の皆さんも御一緒に「くまもと くまもと よかところ~♪」
さて第2部のトークコーナー。今回は こわらベ編、と聞いて「熊八さん、お手柔らかにね」と思っていたら……ホントにお手柔らかだった(笑) サイコロは振らずに、それぞれ自分の話しやすいテーマを選ぶ
午前の部では、みことちゃん・あやかちゃん・すずちゃん。登場の後、座る位置を決めていなかったらしく、しばしウロウロ(笑)
まずは みことちゃん、選んだテーマは ①花童にはいったきっかけ
「3年前、花童の舞台を観て」「踊りを楽しんでくれるお客さんの反応が嬉しい」と落ち着いた答え。私には、やっぱり12歳に見えない
あやかちゃんは②しょうらいのゆめ。答えは「料理人」ーーー「得意な料理は?」と熊八さんが聞くと「……?」
熊八さん、その沈黙を見て、「たまにはお母さんのお手伝いもしようね」(笑)
すずちゃんは④たのしかったこと。答えは「おどること」
最年少のすずちゃん、緊張はマックス。鼻から「ふん、ふん…」と音が洩れる。それが不安がる仔猫のようだったーーーYouTubeで観た、こわらベが鳴り物(太鼓とつづみ)を合奏する映像。「ヤー」と間の手を打つ声がすずちゃんだけ「ニャー」と聴こえて笑ってしまった。この娘は花童きっての猫キャラなのかも知れない
午後の部は、ザ・こわらベ!の、この4人
またもや席順が決まってなくて、しばしマゴついた後、この位置に
木村姉妹、仕草が一緒
身体の傾き加減も一緒(笑)
「では、誰からいきますか?」の問いに、一瞬の沈黙、かなちゃんが率先して手を上げる。この辺はさすがクラーク博士の孫弟子である
選んだお題は①花童に入ったきっかけ。「2歳の時、おばあちゃんに勧められて」。更に②しょうらいのゆめ。ーー「踊りもお囃子も出来るカッコイイ先生になりたい」
お次はガラスのハート、れいなちゃん。見ているこっちもドキドキ。お題は②しょうらいのゆめ。「花誠先生みたいになりたい……」声、ちっちゃい(笑)。でも学校のクラブ活動は音楽部。根っから音楽が好きなんだね
ゆうあちゃんは③じぶんのよいところ。答え「踊りが好きで、一所懸命踊ること」ーーー君は踊りが好きなだけじゃない、芸能の神様に愛された神の子なんだよ、と思うけれど、それはまだ、この娘が知らなくてもいい話
きみかちゃんは④たのしかったこと。「みんなで一緒に踊るところがたのしい」ーーー花童のこいちゃん、緊張して蚊の鳴くような声。この娘たち、踊る時の舞台度胸とトークのド緊張のギャップが凄すぎる
かくてトークコーナーは終わり、「ありがとうございました~」花童名物、膝を曲げた美しいお辞儀
そして緊張の弛んだ表情
さて、話題は前後するけれど、午前の部の終了後、Fさんが興奮覚めやらず、という顔で「どうしたんでしょう、ゆうあちゃん!凄かったですね~」 私「笑顔満開でしたね~」ーーーその演目がこれ
『ドンドン民謡』
ゆうあちゃん、口を大きく開けて歌いながら、ノリノリで踊る
いつもクールなこの娘の豹変ぶりに、Fさん大喜び。この娘たちの素顔まで知っているファンの重鎮、Sさんはその脇で静かに微笑っている
この柔らかな表情、「いとさん振り」が上がったのかな?と思う
その一方で、ただ虫の居所が良かっただけかもね、と思ったりもする(笑)
これが10月公演、キーワードは「笑顔!」の一日でした
では、今回はこの辺で。ご機嫌な笑顔でお別れ~