空はどこから

地味に日記を書いていきます

美少年・花童 ~ 湧々座11月公演

まずはサムネイル代わり、
f:id:faimil:20171106065431j:image戦う きみちゃん

11月の花童・湧々座公演。演目はこちら
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 『木曽もみじ』
f:id:faimil:20171106071607j:image粋な姐さんと町娘を月若さん・みことちゃんが演じる。登場した時、お!と思った。みことちゃんの紅葉の髪飾りが実に似合っていたのである
f:id:faimil:20171106071649j:imageこの紅葉、いわば乙女の差す紅のようなものか。襟と帯締そして鼻緒の色まで揃えて、みことちゃんは紅色、月若さんは水色。コーディネートも心憎い

『江戸の賑わい』あかねちゃんとゆりあちゃん。物売りの姿を軽妙に

ストトン、ストトンと通う道~♪
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f:id:faimil:20171106071919j:imageひりひりトンガラシ~♪

因みに三代目金馬の落語で聞いた話ーー大正天皇は幼少時代、物売りの声色を真似て侍従たちに聞かせていたらしい。当時の東宮御所では堀の外の物売りの声も聞こえたとか、長閑な話である

待ってましたの『トンカラリン』(別名『繭子』)ザ・こわらベの4人衆、かな・ゆうあ・れいな・きみか
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糸を紡ぎ、機を織る、働く乙女を描いた佳作。
私はこの曲とか『小坪いかつり唄』『久留米そろばん踊り』など農漁村をモチーフにした踊りが好きだ(何しろ農村育ちなので)
f:id:faimil:20171108214650j:imageトンカラリン トンカラリン♪ と軽快に鳴らす拍子木の音
f:id:faimil:20171108214740j:image糸車で生糸を紡ぎ
f:id:faimil:20171108214804j:imageコンコンと機を織る
f:id:faimil:20171108214834j:image仕上がっていく織物
f:id:faimil:20171108221107j:image広げる純白の絹

YouTubeで知って、生で観たかった演目の一つである

『ひえつき節』ここねちゃん、湧々座2度目の出演でソロをつとめる。前回はあやかちゃんがソロだった。花誠先生、この娘たちの度胸試しをしているのだろうか
f:id:faimil:20171106085121j:image動きは固いが、教わった振り付けを丁寧に踊っている。いずれ、固さの取れた笑顔の演目も観れることだろう
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 『菊・御主殿』月若さんが袖から登場すると、一瞬にして会場の空気が変わる。客席から「ほぅ…」と声が洩れる
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 その存在感、品の良さ、緻密な踊り
f:id:faimil:20171108220025j:image美しい人が美しい着物を纏い美しく舞う。『佳人』という言葉が頭に浮かんだ

 

『古跡の秋』紅葉娘・みことちゃん2度目の登場。相方はあやかちゃん
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目深に被った笠で、あやかちゃんの表情が見えずらかったので……
f:id:faimil:20171108221815j:imageアップで撮ってみた

 

第2部トークコーナー。8月に続いて ザ・わらベ&はつ喜、2度目の登場(但し今回は月桃さん欠席)

お題はこちら
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前回と比べると余裕の表情?
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でも立ち姿が花童らしくない。面接前の女学生のよう
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 午前の部
「さて、誰からいきましょうか」で、さっと手を上げたのは ゆりあちゃん。前回、緊張で目が泳いでいた ゆりあちゃん、今回は積極的に攻めに出る
f:id:faimil:20171110084342j:imageサイコロを放って出てきたお題は
④ひょっとしたら私だけ?ーー「南阿蘇に住んでいるんですけど、平日の練習日には先生が中学校まで迎えに来てくださること」……花誠先生を独り占めに出来る車中の時間、それは嬉しいだろうね

「どんな話をするの?」と熊八さん「エート……舞台の事とか、エット……」「たくさんいろんなお話をするんだね(笑)」「はい!そうです(笑)」
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あかねちゃん③「緊張するとあくびが出るんです」……そういえば、オリンピックの水泳で、カメラが追っていた優勝候補の選手がずっとあくびを繰り返していた。こういう体質の人っているんだろうね

「どんな時に緊張するの?」「CDじゃなく生演奏の時とか緊張します。あと、月若さんたちがいない時。私が一番の年長になるので」ーーー例えば先月の湧々座がそうだった。真面目なあかねちゃん、責任感も強いんだろうね
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月若さん①「1才から踊りを始めて21才の現在まで続けていること。自分を褒めたいし、良かったな、頑張ってきたな、と思う」ここで熊八さんが補足する「実は月若さんはお祖父さんお祖母さんが踊りをやっていて、お腹の中にいる時から日本舞踊に親しんできたんですよね」
「お稽古を休んで友達と遊んだりしたいと思ったことは?」「遊ぶより踊りたいです、踊りが生活の一部というか…」踊ることが生きること、呼吸の一部、正に日本舞踊の申し子

 

午後の部
ゆりあちゃん③「昨日山鹿の八千代座で玉三郎さんの舞台を観ました。あかねちゃんやこわらベの子達と。すごくカッコ良かった、手の動きとか、踊り方が花誠先生と似てました」目を輝かせ、頬を紅潮させながら
……私はー度だけ、玉三郎さんの踊りを観たことがある。京都から転勤が決まった時、一度は行っておかなくては、と南座に。その日の演目に玉三郎さんの踊りがあった。上手側二階席、舞子さんのずらりと並ぶ姿が壮観だった。姿勢を正し、お手本を学ぶように舞台を見つめていた。花童の娘たちも、きっとそんなふうに玉三郎さんの踊りを観ていたんだろうな、と思う
あかねちゃん①「踊りの振り付けを一日で覚えられた時」集中して気持ちよく稽古が出来た時、成果を実感出来た時、踊りに没頭出来た自分自身を褒めてあげたくなるのだろう
月若さん②、お題は『ここだけの話』ーーー「ここだけって言っても、ここでしゃべったらみんなにわかっちゃう」と笑顔
f:id:faimil:20171108222350j:image「舞台まで時間がない時、みんな車中で髪を結ったり着替えたりします」「どのくらいの時間で出来るの?」「急いだら40分くらい。下の子はお母さんたちが手伝って」「月若さんも手伝ってあげるんですね?」
「自分は運転係です。もう大人なので(笑)」

最後に花童名物
f:id:faimil:20171109124239j:image美しいお辞儀

 

そして第三部

『KURODA-BUSHI』黒田節を新しくアレンジした曲。「BUSHI」は「武士」にも通じる

 こわらベ達、凛々しい壮士振り
f:id:faimil:20171109125054j:image杯を飲み干した後、戦闘シーンになる
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倒れ伏した壮士・すずちゃんを仲間がずるずると引き摺り戻す
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私はこのシーンが好きで(舞台上で引き摺られる振り付けなんて他に見たことない)ずっと すずちゃんを観ていたら……
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一瞬目が合った……ような気がした

そしてすずちゃん、立ち上がるやいなや、元気にセンターへ
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5人揃って、わらベンジャー!
f:id:faimil:20171109124424j:imageのポーズ(笑)

 

こわらベ達の退場後、一転、場内に蕭々とした雨音が流れる……

『ひのくに夢幻』

雨は振る振る  人馬は濡れる  越すに越されぬ田原坂
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田原坂の曲に乗り、風(≒時代)に翻弄される木の葉のように舞うf:id:faimil:20171108214416j:image

夢破れ、野に朽ち果てんとする若者の胸に去来する思いとは何か
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途中、五木の子守唄が流れ哀感を高める
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倒れた同胞を抱き起こすf:id:faimil:20171109162452j:image
肩を貸して立ち上がるがf:id:faimil:20171109162557j:image自らも力尽き、よろけて倒れる
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もはやこれまで、見交わす目と目f:id:faimil:20171109162312j:image

頭を垂れる先にあるのは越されぬ坂か、還り得ぬ故郷かf:id:faimil:20171109162351j:image
大西郷の肚の内など図り得ない。だが挫折した赤心の若者の胸中は……

「おもちゃの兵隊」のような愛らしさの こわらベの踊りと 、ザ・わらベの重厚な踊り、その違いは何だろうーー

越すに越されぬ田原坂

人生で必ず起こるであろう挫折、実体験で知らなくても、言葉の意味は知っている。それが少年と青年の違いであろうかと思う

そして挫折を繰り返した歴史好きのおじさん(例えば私)はーーこの娘たちの鎮魂の舞いに、つい、うるっとしてしまうのである

それにしても、今回の ゆりあちゃんf:id:faimil:20171111114439j:imageこの娘は元々、舞台上できらきら輝く瞳が印象的なのだが、袴姿も良く似合い、正に「紅顔の美少年」振りであった

 

おまけ

実はこのブログ、このあと「居酒屋で『美少年』を呑んだ」とオチをつけるつもりだった。ところがーーー無いのである。居酒屋を聞いて回り、酒屋で問い合わせても『美少年』がない。そんなバカな!熊本の地酒だぜ

諦めかけて覗いた郷土料理店。「今、取り寄せますよ」と女将さん。やった~!とカウンターでまずビールを注文。と、奥から「えっ? ないの?」と酒屋に問い合わせている女将さんの声。サーバーでビールを注いでいた店員さんの手がピタリと止まる。女将さんの説明 「トラブルがあって、今は市内の酒屋で扱ってないそうです。輸出用にまわっているようですよ」と申し訳なさそうに

「そうですか、ないと分かれば諦めます。『武者返し』下さい」女将さんと店の雰囲気が気に入っていたので、ここで腰を落ち着けた。カウンターに並ぶ郷土料理のセット

馬刺、レンコン、田楽、阿蘇高菜……進む焼酎、頭はぐるぐる

すっかりご機嫌で「また来月きますね」とボトルキープ

かくて私にもやっと、熊本で「行きつけの店」が出来たのである(笑)

 

ということで、今回はこれにて
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御免仕ります
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