空はどこから

地味に日記を書いていきます

初見!花童 ~ 漱石と娘おどり

YouTubeで盆踊り動画を漁っていたら、不思議な画像(サムネイル)が出てきた

「日本の伝統を受け継ぐ少女達」

「日本人形が踊っている」

それをクリックして――ファイミルの花童時代が始まった

見つけたのは10月、一日平均3時間として……延べ100時間はYouTubeの花童を観ていることになる

今月、やっと熊本に行く段取りがついた。ついに本物の花童に会える

そうこうしている中、妻がネットで見つけた

あれ?あかねちゃんとゆりあちゃんが東京に来るよ

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舞台『アイラブくまもと 漱石の四年三ヵ月』

漱石は教師として二度地方に赴任した。最初の地、松山は後に『坊っちゃん』の舞台となる。そして次の熊本を経てイギリスに留学する

『三四郎』は熊本出身、熊本から上京する列車のシーンで物語は始まる。漱石が熊本を憎からず(?)思っていたことはここからも伺える。

そして漱石の新婚生活はここで始まり、門下生の白眉、寒月君こと寺田寅彦と出会ったのもこの地である 

その漱石の熊本時代を題材としたのがこの舞台。震災復興イベントとして熊本と東京で上演された

その劇中、花童の年長さん、あかねちゃんとゆりあちゃんが娘おどりを披露する

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上演中、今か今かと登場を待ちわびる。そして暗転、踊りのシーン……

色違いの着物を清楚に着こなしたあかねちゃん・ゆりあちゃんが現れる

うわあ~、と会場から声が洩れる……

とにかく、綺麗なのである。YouTubeの動画と実物は違う、それは想像していたけれど……ここまで違うとは思わなかった

とにかく……綺麗なのである

演目が『肥後の通り名』であることは後で知った。熊本所縁の曲をメドレーにした十数分の大作である。言うまでもなく『おてもやん』は入っている。キンキラキンのガネマサどんに東雲のストライキ……え?と思って調べたら、「何をくよくよ川端柳~♪」の東雲節(ストライキ節)は熊本由来の唄だった

その中で、さすがにこれは違う。「沖の暗いのに白帆が見ゆる、あれは紀ノ国みかん船」――このメドレーに熊本とは無縁の『かっぽれ』が入っていた(なお、これについては明治期に熊本で流行った娘歌舞伎でかっぽれが演じられていた、ということを、後日花童ファンの先輩から伺った)

私は花童の踊るかっぽれが好きである。かっぽれは言わば男踊り、シナが少ない。その曲中、胸の前でくるくると手のひらを廻す振り付けが、女の子らしくて実に愛らしい

考えて見れば、この曲は蜜柑と木材で巨万の富を得た文左衛門が遊郭で金にあかせて豪遊した、という故事がベース、お座敷の戯れ唄、元は品の良いネタではない

ところが、花童のふたりがこれを踊る時、そこには得も言われぬ「清潔感」がある

可憐、繊細、軽やか、優美……どんな言葉で誉めても構わないけれど、私の頭に浮かんだ二文字は「清潔」だった。

この娘達が精進を重ね、身に付けた技量。そして少女ゆえに持ち得る清潔感。それが花童の真髄である

舞台は途中、15分の休憩が入る。「いや~綺麗だったね」「う~ん、YouTubeと違うね、生は凄いね」妻とふたり、出てくるのは感嘆符ばかり――と、隣の席のおばさんがアメをくれた

妻とそのおばさんの会話を聞いていると――なんとこの人、ゆりあちゃんの大叔母さんだった

大震災の直後、落ち着かない熊本を離れて、ゆりあちゃんはこの大叔母さんの家に居たらしい。それも私達と同じ千葉県

熊本中心で活動する花童、東京に来るとなれば、首都圏の身内が駆けつけるだろうな、とは思っていたけれど……まさか隣にいたとはね

何だか想像がつかないのである……家に帰ると、花童の娘が居て、食卓で普通にご飯を(煮込みハンバーグか何かを)食べている――それはどんな感じがするのだろう。何しろ私の知る花童は、まだYouTubeの中だけ、仮想現実のようなものなのだ

大叔母さんに、遠慮がちに聞いてみた「YouTubeでは、もうちょっとぽっちゃりして見えたけど、少し痩せたんでしょうか」

「中学生になって、ほっそりしたかしら……でもよく食べる子ですよ」

ああ、やっぱり……って、こらこら(汗)

 

終演後、出演者の見送りを受けて会場を後にする。花童の二人は主演の浜畑賢吉さんの隣に立っている。その姿はまるで、浜畑さんが可愛がる親戚のお嬢さんのようだった

「凄く綺麗だった、見惚れたよ」声を掛けると、はにかんだ笑顔を見せた。舞台を降りると、ホントに普通の娘さん。私もまた、自慢の姪っ子の舞台を見に来たような、満ち足りた気分になった

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まだ自分で撮った写真がないので、これは絵はがきの画像。今週やっと熊本に乗り込む。私のブログにも華やかな写真が追加されることだろう

 

倦まずに精進を続けていれば、いつか神が降りて来る――例えば芸能の世界とは、そういうものなのではないか

この娘達の清々しい踊りを観ていると、そんな思いが胸に浮かんでくるのである