お東さんとお西さん
滅多にないのだけれど、京都で会合に出席した。一回目は8月だった。同僚の車で京都駅まで移動中「ここで停めて……オレの本山なんだ」そして一人で参拝した――そこは真宗大谷派、京風に言うと「お東さん」、つまり東本願寺
夏バテ真っ最中、でも本堂はうっすらと冷気(霊気)があり、時折吹き込む風が涼やかである
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつ なんまん……
子どもの頃から見よう見まねで覚えたお念仏を唱える
そして今日、再び「ここで止めてよ」「ああ、本願寺ですね」
なんか、大きな旗が飾ってあるなあ、おまつりかしらん?
震災復興祈願の看板も前回と違う
イチョウのライトアップ、黄葉がきれい
イチョウの大木は滋養をたっぷりと蓄えている。生命力の象徴だ
本堂にはびっしりと椅子が並べられていた。なにかイベントでもあったのかな
最前列、椅子の前に正座して仏壇に手を合わせる。礼拝はやっぱり正座で行いたい、これからも膝が曲がる限り、私は正座する
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつなんまん……
頭蓋骨を風が通り抜け、鼻の奥がスカスカする、そのままずっと座っていたい
私と同じクチだろう、やっぱり正座でなきゃ、とおばさんが座る。なんまいだ~なんまいだ~と隣から声が聞こえる
立ち上がって振り替えると、ごつい白人が3人、カメラをぶら下げてもの珍しそうに立っている
Don't photo!と言ってやろうかと思ったけど、やめた。もし有り難みの分からない者であれば、何を言っても 無駄である……
山門を潜って駅へと向かう――いくらなんでも気がついた。
ここは本願寺派――お西さんじゃないか!
ファイミルの宗教心もこんなもの。西も東も分からない
お東さんへと向かう。もう夕刻5時は過ぎている
閉まった門前で、僅かばかりの南無阿弥陀仏
振り向くとスカイツリー
……ならぬ京都タワー
こんなことを思い出した。アニメ『茄子アンダルシアの夏』の続編『茄子スーツケースの渡り鳥』――舞台は日本、栃木県。イタリアの競輪選手達が縁あって日光のお寺を訪れる。廊下を伝い、障子の開いた本堂を横切る。金襴の仏壇を「ふーん?」と眺める
そこで和尚さんの活が入る
「異国の者でも、尊きものの価値は分かろう。手を合わせなさい」
20代後半、イギリスのウィンチェスター大聖堂を訪れたことがある。ジェーン・オースティンの足跡を訪ねたついでだ。何にも知らないで入って、カンパがわりでクリスマスキャロルのカセットテープを買った。売り子の金髪のお姉ちゃんが、アジアの異教徒ににっこり微笑んだ
伽藍の宏大な空間に立った時、涼やかな空気を感じ、鼻の奥がスカスカした
なにさまの おわしますかは 知らねども
かたじけなさに 涙こぼるる(西行)
神社仏閣(霊域)に惹かれる心情――この短歌ほど見事に表現した言葉を、私は知らない
盆踊りのおしまい
西新井大師で偶然見かけて始まった盆踊りブログ、いよいよ最終回
さすがに10月に入ると盆踊りの開催は少なく、どこにする?という選択肢はない
千代田区ふれあい秋まつり――盆踊りもやります、屋内だから雨天決行です――実際、土砂降りだった。やっとパーキングに駐めて――センターの駐車場が分からなかった――ずぶ濡れで区民センターに入ると
広いロビーにお年寄りがずらり、その奥まったスペースで
踊りの小さな輪、ズラリ座って横向いた、お年寄りの視線を浴びつつ……まあイベントの余興の一つというところか
それでもやっぱり「踊りたくて来た!」という人が何人かいた
イベントのスタッフジャンパーを着た女性が一人、とにかく踊りたくて持ち場を抜けてきた、という感じで輪に入ってきた。丸顔に満面の笑みが好ましかった
豊川悦司(似の男性)が幼い娘を連れて参加している。踊りが終わると直ぐにタクシーで去っていった。この親子、その後、他の会場でも見掛けることとなる――どんな人生模様の父娘なのだろう、とは余計なお世話
港区芝公園での盆踊り、これも大きなフェスティバルでの催しの一つ
この辺、駐車場は少ないし、あっても高い。ぶつくさ言いながらやっと駐めて、増上寺のイベントをぶらぶら。お寺の広間で特別公開、天井の日本画。ずらり数十枚並んだ作品の中には、えっ!というような著名な画家のものもあったらしい――えっ!と言ったのは妻、私は知らない――ぼんやり見惚れていたら、踊りの開始に遅れた
ここから会場の芝公園まで、凄く遠かった。この界隈、広すぎるんだよ
直前まで大雨、開始時刻には上がっていたけれど
地面はぬかるみ。申し訳程度にダンボールが敷いてあったけど、もうドロドロ、みんな水たまりをピョコピョコ避けながら踊る
それでも盆踊ラーは挫けない。着物の人は大変だったろうに、ホントに踊りたいんだね
いつもの盆踊らーの内、村田くん(村田雄浩さん似)――いつも着物の着こなしが決まっていて、腰に提げる小物なんかも粋である――この日は裾の端折り方が堂に入っていて「よ、イナセだね!」と言いたい感じ
途中、太鼓の演技、幟には『助六太鼓』
うーん、江戸前だねえ
そして、べったら祭り――平日だけどその年最後の盆踊り。東京中の盆踊らーが集まるらしい
職場から駆けつけた頃は、プロの歌い手さんで生歌踊り
車両を通行止めして路上で踊る。交差点まではみ出す程の盛況ぶり。とは言え、やっぱり平日、仕事あけはつらいよ。知らない曲も多いし、べったら音頭も覚えていない
街灯に凭れてぼんやりと踊りを眺める。お馴染みの盆踊らーがちらほら……と、無気力姉妹だ!穴八幡以来……なんだか懐かしい。そして揃いの黄色いハッピの中に、プラモさん発見!私の頭は無気力祭り(笑)
一方、ここを先途とばかりに踊り続ける妻。下手くそなりに、何やらコナレ感が出てきた。通ったもんなあ
盆踊りタイムも終わって夜店見物、ベったら漬けを試食して、あとは散策がてら、地下鉄駅まで歩く。燃料切れで途中、焼鳥屋に立ち寄る
祭りの喧騒から離れた場所、この界隈は閑散としていて、外人(アジア人)の女の子がポツンと店番をしていた。壁には古い邦画のポスターが貼られている。よくある「昭和ノスタルジィ」の演出だ。
ホッピーを飲みながら、つらつら眺める寅さんのポスター
「東京市」の情緒を求めて各地を巡った盆踊り。結果として――葛飾、墨田が良かったなあ、と思う。ああ、帝釈天で寅さん音頭を踊りたい……
東京は西から近代化したらしい。荷風さんは日本の情緒が失なわれていくのを嫌って、東へ東へと彷徨った。そして墨東綺譚を書いた。最後は江戸川を越えて千葉県の市川に居を構えた。
盆踊りをきっかけに、私は東京都の西と東を横断した。東京はなんと大きな「地域」の集合体なのだろうと思う。東西でずいぶんとキャラが違う。別の街なのだ
そして私はなんとなく、どこかアカ抜けない「墨東?」が好きである
お多福、獅子舞、盆踊り
自称、葛飾柴又の住民(実は県民)ファイミル夫妻、盆踊りを求めて遂に23区を飛び越えた――小平市、武蔵野神社の祭礼、しかも盆踊り(正確には「奉納踊り」)はお祭りの一部で一時間のみ
ホントにいくの?
一度行ってみないと分からないから……
それが10月初旬のことだ
そして鈴木囃子(ばやし)という無形文化財がある
いきなり目についたのは、山門の脇でお囃子に合わせて踊るお多福さん
参道は正に縁日状態。光の街が出来たよう
その一方で、本堂周りはうす暗い。まずはシャランシャランと参拝する。脇に大きな猿田彦の立像。猿田彦の像を見るのはたぶん初めて。フラッシュ焚いて写真撮ろうかと思ったけど、なんだかバチ当たりな気がしてやめた
猿田彦は天狗の元祖。私が初めて猿田彦を知ったのは手塚治虫の『火の鳥・黎明編』だった。当時中学生の私は「大河もの」を読んだ、という充実感を覚えたものだ
盆踊りをするはずの広い境内はコーンと紅白ポールで簡易なバリケードが作られパイプ椅子が並んでいる。ステージ上ではフラダンスなどのショーが披露されている。バリケードの周りには見馴れた盆おどらーがちらほら
オニッポリ君に姫香さん、若さんいとさん、小金治さんにブーツさん、町会さんに野球部くん……揃いの浴衣のおしどりさん(中年ご夫婦)もよく見掛けるなあ
まだ盆踊りまで1時間以上ある。どうやって時間をつぶそうか、と山門に戻ると
鈴木囃子の櫓には白狐が登壇している
ずばり、カッコいい!
周囲を見下ろし、人間どもを睨め付ける
時に櫓から身を乗り出して威嚇する
鳴り続けるお囃子、笛も鉦も太鼓もすっと次の者が現れて交代する。音曲は全く途切れない
狐の足元に、鬼瓦のような赤い顔が見える、すっと立ち上がると獅子舞だ。そして狐は幕の裏へと消えていく。異形のもの達の登壇も決して途切れることはない
……因みに、斜め前から見ていた私は、裏の休憩所に戻った白狐がそのカッコのまま、しゃがんで扇風機に当たっているのを見て笑ってしまった
さて獅子舞、噛まれると厄除けになる、というのは日本民族の常識。しばらくすると子供を抱っこしたお父さんが櫓下に近寄っていく。獅子さん、屈んで子供をパクン
そうなると、遠巻きに眺めていた子供達、わらわらと近寄ってくる
獅子さん、ご丁寧に子供達の伸ばした手を余さずパクンパクン……まるでゆるキャラ、一人ぐらい怖がって泣けよ、と思っていたら最後に抱っこされた幼児が盛大に泣き出して、なんだか嬉しかった(笑)
やがて獅子の後ろに現れたのは……これは可愛い!お多福姉妹。妹は小学校高学年くらいか、踊る姿も初々しい
――と、獅子舞で味をしめた子どもが櫓の下に寄ってきて手を伸ばした
えっ?どうしたらいいの?
小っちゃいお多ちゃん、まごついてもじもじ(汗)――お面の下の羞じらう表情まで見えるようで、それはもう愛らしかった(笑)
途切れることなく、いつ果てるとも知れず、繰り返される囃子と舞い、その光景を眺めていると、頭が茫然としてトランス状態に入っていく
なるほど、鈴木囃子――「神事」である
おっと、そろそろ時間だ。盆踊り――
広場は最後のステージが終わったところ。「会場の準備にしばらくお待ちください」とスタッフさん達がパイプ椅子を片付け始める。目の前で若さん・いとさんがバリケードを外している。いとさんは胸に何本もポールを抱えてステージ裏に運んでいった。あれ?ここが地元なのかな、と思ったけれど……要するに早く始めたくて、いそいそとお手伝いしているのであった(笑)
ステージに揃いの浴衣が並ぶ。地元JAの職員さんらしい。習い覚えた武蔵野音頭を踊り出す。これはかなり新しい曲で、振り付けがいかにもイマふう、ハートを作る萌えポーズみたいなものまである。レパートリーを増やす意欲のない私は見物、妻は一所懸命踊って、感想――なんか、リズム体操みたいだった
飛び入りさんはこれをどうぞ、と首にかけるピンクの布を配っている。これは「小平音頭」でくるくる回して使う
そして盆踊りの定番、東京音頭・大東京音頭・八木節・炭坑節――JAの姉さん達は武蔵野音頭しか練習していないらしく、炭坑節では私を手本にして後ろについてきた……ファイミル、初めてのお師匠さん(笑)
会場は大盛り上がりだが、延長してもらえる訳もなく、一時間はあっという間
「最後の一曲は恒例の――好きになった人!」
おおー、葛飾の町内会盆踊りの記憶が甦る。でもこの曲には2通りの振り付けがあるらしい。パートナーが次々とチェンジするバージョンと固定バージョン
この会場は固定バージョン、ファイミル夫妻も参加する。でも振り付けが覚えられないまま終わっちゃった。「来年もいらっしゃいね」と妻が隣のおばさんに話しかけられていた
振りを覚えられなかった原因は、余所見をしていたから――おしどりさんはもちろん夫婦で踊っている。ブーツさんは町会さんと組んでいる。オニさん・姫さんも楽しそう
そして、若さん・いとさん――手のひらを合わせて踊る姿は二輪の朝顔が触れあうように爽やかだった……
帰りの車中。「来年どうする?」
う~ん、もし来るとしたら――いっそ明るいうちに来る。そしてぼう~っと鈴木囃子を眺めてトランスに浸る、そのあと盆踊り……合わせて一本だな
もちろん、先ずは猿田彦の命にご挨拶してからね……
応援の楽しみ ~ アクアライン・マラソンのこと
私の足は、いつの間にか走ることに適さなくなったらしい
仕事柄、山林を歩くことはある。一日中歩いたりもするからスタミナはそれなりにある。でも平場を走ろうとすると、5キロで膝がパカンとなる。膝の筋がジンジンと痛みだし、足がアスファルトの舗装にめり込むように重くなる
妻はマラソン大会には出たがるのだが、こいつは10キロコースを笑顔で「歩き切る」ようなヤツだから、ハーフ以上はとても無理
ちばアクアライン・マラソン――千葉県木更津市で発着し、アクアラインを走って海ほたるで折り返す
海の上を走るなんて、気持ち良さそうだなあ、とは思う。でもコースはフルかハーフのみ。海の上だけ走る5キロコースなんてない(当たり前だ)
さて、札幌にいる妻の友人が今回このマラソン大会に出場することになった。これまで札幌の大会で何度もフルマラソンを完走している強者である。5キロでパカンの私とは身体の造りが違う
千葉県民のファイミル夫妻、当然応援に行く
木更津は過去に一度来たことがある
しょ、しょ、しょじょじ~♪の狸囃子で有名な証誠寺はここにある
でも、期待しないように――今は市街地の一角、狸囃子の聞こえそうな鄙びた風情はない
一万人以上が参加する大会で、友人の姿は見つけられるだろうか、と思ったけれど、文明の利器とは有りがたいものだ。スマホのGPS機能で現在地が分かるらしい
一ヶ所目、8キロ地点。給水所付近
ボランティアのおばさんがいっぱいいる。凄くいっぱいいる。こんなに動員が必要なのかな、と思ったけれど、選手が全て通過してからの後始末を見て納得する。とにかく凄いゴミの量だった
500mlのペットボトルなんて持ち込まなきゃいいのに、と思う。あっという間にゴミとなるボトルの山、勿体ない
給水なら、関東各地から自衛隊のタンク車が動員されている
震災以降、自衛隊の株は大いに上がった。武力を誇示するよりも、災害時に文字通り「国民を守ってくれる」自衛隊はヒーローである。旗がカッコ良くて、いっぱい撮ってしまった
私のお気に入りは天狗のマーク、アカギ飛行隊
こちらは般若、対戦車ヘリコプター隊
第103飛行隊に
群本部付隊
……話が逸れた
さて、妻とランナーの友人はGPSで位置を確認できるようスマホで設定していた。友人はコスチュームの写真をメールし、妻は目印にピンクのタオル(桜マラソンの記念品)を振るね、と伝えていた
もうすぐ、もうすぐ、とスマホに首っぴきの妻。ピンクのタオルを構えながらランナーに目を凝らす私――と!
ランナーの群れを離れて女性が駆け寄ってきた。スマホから目を上げておっ、と驚く妻。目の前にいるのにピンクのタオルを慌てて振り出す私
「どうも、お久しぶりです」と立ち止まってお辞儀され「あ、どうもご丁寧に」
慌ててカメラを構えた妻の写真には、深々とお辞儀する友人の頭が写っていた
息を切らす様子もなくコースに戻る友人を眺めながら「ビックリしたね」「うーむ、応援に来たのか邪魔しに来たのか分からん……」
よーしリベンジだ、と2箇所目に移動
でも、ランナーが全部通り過ぎるまで車道を横切れない。最終ランナーが恥ずかしそうに歩いて通行し、最後尾確認車が通り過ぎた。ボランティアのおばさん達が路上に出て散乱した紙コップをホウキで掃いている。それでも「許可があるまで横断はご遠慮ください」と若い警備員の使命感は堅きこと岩のごとし。こっちも小市民の意地で指示があるまで絶対渡らないぞっ、と待っていたら――給食所のおばさんがお盆に山盛りの食べ物を載せて「余してもしょうがないから、ほらいっぱい持ってって」と
チョコパンもろた(笑)
さて2箇所目は20キロ地点
アクアラインを降りて直ぐのカーブ。次々と現れるランナーの顔、顔、顔……
人間っていろんな顔があるんだな~、と当たり前のことに感心した。妻は回転ずしみたいだと思ったらしい(笑)
顔を出さない人もいる――コスプレランナー
プーさん
一番笑ったのはこれ
カオナシ……渋いところを狙ってきたなあ(笑)
さて、スマホのGPSにはタイムラグがあるかも知れない、と妻が言うので、早くからピンクのタオルを頭上で振り続ける
背後にはマラソンの定番、太鼓の応援団。リズムに合わせて振っていたけど、だんだんクタビレてきた。腕を下げたその時、友人が手を振って軽やかに駆け抜けた――「写真撮れた?」「……失敗した」「よーしリベンジだ!(こればっか)」
車を止められる場所は限られるから、一気にゴール地点に向かう。やっと駐車場を見つけて、途中腹ごしらえして目的地へ。ここでは賑やかにイベントが行われていた
ゆるキャラがいっぱい
たくさん居すぎて、誰が誰やら分からん(汗)
妻のお気に入り、テントウ虫ちゃん
一番可動域の狭かったのはこの子。着せられた人は難儀したことだろう
うしちゃんが目線くれた
我らがチーバくん、一番人気。私はなかなかのチーバくんファンで、数年前、幕張メッセで佇んでいる姿を見たときは、けっこう萌えた
木更津は証誠寺のタヌキだったらしい……でも遠目に後ろ姿が見えただけ、写真撮れなかった
さて、再び話を戻して
今度こそは先に見つけるぞ、と目を皿にする。もはや見慣れたコスプレランナーが通り過ぎていく……クマもん、ガッちゃん、サイヤ人……
来た!
「〇〇みちゃ~ん!」
今度は向こうが気がつかない――タオルを振りつつ「〇〇みちゅゎぁ~~ん!!」
そして私たちに気がついて、両手を振って笑顔で走り抜ける姿を見送り
「写真撮れた?」「……失敗した(汗)…速すぎるんだもん」
あーもう、と思いつつ――でもまあ、面白い一日ではあった
なんかさ、マラソンを応援するのって
用水路に笹舟浮かべて、流れてくるのを待っている感じに似てるよね……
とりあえず、ー句――
天高し 友は舗装を 流れくる
秋日和、愉しい一日でござんした
それいけ、盆踊ら~!
我が愛しの葛飾は8月で盆踊りが終る
何故か東京では、月が進むと共に盆踊りも東から西に移動する
荷物が邪魔にならないよう、ファイミル夫妻は車で盆踊り会場へと向かう。それからタイムパーキングの出来るだけ安いところを探す。でも、会場が西へと離れるにつれて、都内の横断がだんだん苦痛になる
「来年どうするかはともかく、一度行ってみないと分からないから…」いつの間にか妻の方が熱心だ
本郷菊坂――雨模様の中、4時には中止を決めていたらしい。しょんぼり帰っていく浴衣姿がちらほら
ああ、本郷菊坂!昼間散策したかったなあ。菊坂ホテル(菊富士ホテル)はどの辺にあったのだろう。
上村ー夫の劇画『菊坂ホテル』は小説王(山川惣治の絵物語復活を看板にした文庫サイズの雑誌、荒俣さんの帝都物語もこの雑誌だった)連載時に読んで単行本も買った。このホテルに滞在した著名人の内、竹久夢二と谷崎潤一郎にスポットを当てていた。夢二が名作『黒船屋』を描いたのは、正にこのホテルらしい。
そして谷崎、菊池寛、斎藤茂吉、今東光ら、当時の文人の「バケモノ」振りが、骨太のタッチで描かれていた――
今、散策してみたら、東京市の情緒はどれくらい感じられるのだろうか
閑話休題、翌日出直し
またもや雨模様だが、この日は無事開催。先ずは子どもの時間。お菓子とおもちゃ(振るとピカピカ光るアクセサリー)がたっぷり用意されている。その後は少し離れて花火を始めた。もうもうと煙が上がっている
……などという喧騒はそっちのけ、大人達は踊りまくる。もう9月も下旬、盆踊りシーズンはいよいよ終わりを告げようとしている
演目はこれ、でも音楽テープの調子が悪くて順番に流せず。何でもいいから流せ流せ!と踊り手達。結果として炭坑節と八木節が何度も流れたのはラッキーだった。郡上おどりなんて、難しくて踊れない
この会場は路上に太鼓を置き、その周りを細長~く踊り手が囲む。踊り手が増えるに連れて楕円はどんどん伸びていく
輪の中央にお師匠さんが二人、正にお手本となって踊っている
キリリとした着物姿の絹代師匠(言わずと知れた、田中絹代さん似)と、あっちゃん(佐々淳行さん――元・内閣安全管理室長にして、東大安田講堂事件鎮圧の指揮官――に似てる。因みに私はこの人を尊敬している)
この二人の端整な踊り、手本にすると凄く分かり易かった
そして9月のラストは青山。葛飾の東に住むファイミル夫妻にはホント、遠かった
ここの盆踊りはすごく盛況らしいよ、と妻
そりゃそーだ。盆踊りシーズンもいよいよ終わり、しかもこの日開催しているのはここだけなのだ
踊りの輪はどんどん厚くなり、もはやステップの隙間もない
その中に見たことのある顔がちらほら。東京中の「盆踊らー」総集結だ
絹代師匠にオニッポリくん・姫香さん。若さん・いとさんを見るのは久し振り。日暮里での白シャツくん、ブーツさんはそれぞれ粋な浴衣姿。村田くんにプラモさんもいる。早稲田で見かけた虎キチさん(阪神のハッピを着ている)、町会さんと書記長さん(いつも演目をメモしている)。柴又にいた神風じいさんまでいる――この人、どこに住んでるんだろう
混雑の中、踊りの身振りはどんどん小さくなり、私の踊りも無気力さん並み。そんな中でもすぐ後ろで「はいよ、あらさ!」とご機嫌な合いの手、友近さんだ
本会場から離れて、片隅で小さな輪を作る盆踊ら~のー団
踊りが上手過ぎて、もはや神々しい
かくて9月は終わりぬ
で、、、実は10月も有るのである……
私の盆ブログはいつまで続くんだぁ?
墨田のはしご踊り~町会の花②
墨田区町内会の盆踊り大会、味をしめて翌日も参加
早く来すぎて準備も出来てない。この町会はコミュニティセンターの目の前。段取りが楽だろうね
始まった!センターの3階から眺めてみた
演目はこんな感じ、この順番で曲が流れる
私が振り付けを覚えてるのは八木節と炭坑節だけ。ぱみゅぱみゅは…別に踊れなくてもいいなぁ
2巡目の炭坑節を踊ってから、次の会場を探して移動する。活気があって、見てても楽しかったけどね
移動中、小雨からだんだん雨足が強くなってくる。このまま中止になるかも…と思いかけた頃――ヤグラ発見
雨で中断。ヤグラの上で子ども達が雨宿り
ヤグラの脇に浴衣の姐さんが立っていて、何かと世話をやいている。きっと地元の保母さんだよ、と妻
小降りになったところで皆が焦れだす
止んだ!止んだ!始めようぜ~(ホントはまだ止んでない)
再開ー曲目はオバQ音頭
「はい!踊って踊って!」
お姐さんが威勢よく子ども達を鼓舞する。釣られて子ども達が踊り出す
今年、何度も見てきたオバQ音頭――子ども達が生き生きと踊る姿を見たのは、初めてである
参加を優しく説得する?お菓子で誘う?
違うね。このお姐さんみたいにヤグラに追い上げて強制的に踊れ踊れと煽り立てる、そして、良くやったと最後に褒める――子どものしつけは暴力と愛情だよ。この鉄火姐さんはそれが出来る人だ
この町内会、威勢のいいハッピの若衆が大勢いて、終始ざわめいている
ふと、ヤグラの上の提灯を見ると――そこには協賛の商店名ではなく、子供会・婦人会などの個人名が書いてある
祭りは自分たちのものだ、向こう三軒両隣、ご近所共同体が健在なのが伺える
途中、ハッピの若衆がヤグラの上でオリラジのマネをするという、結婚式の余興並みの小ネタ(笑)を挟んで、祭りは佳境に――
ワチャワチャした騒ぎの後、ヤグラに三人の娘さんが残った
踊る間、若衆たちが曲に合わせて三人の名前をコールする――町内会、青春の図
この三人がまた、キャラが立っていて、
一人は例の鉄火姐さん、仕切り屋だが人望があって、彼女に頼れば盛り上がることを皆が知っている。スタッフのおじさん達も次にどの曲を掛けるか、この姐さんに聞いている
二人目は終始おとなしく微笑んでいながら、誘われても物怖じしない、控えめなしっかり者。物腰の柔和さとノリの良さが、いかにも男性に好かれそう
もうー人は発展家の可愛い子ちゃんで、彼氏を絶やしたことがなさそうなタイプ
この三人が光の輪の中で、まさに青春の時を刻んでいる――
三者三様の人生を歩みながら、いつか再びこの三人がヤグラに立つ……と想像してみた
私が太一さんなら、この三人でドラマを作る
いや、洋次さんの映画かなw
この会場で、私は「町内会盆踊り」の理想型を見た。こんな土地で青春を送りたかったなあ、と思う
さて、この町会もお開き、締め太鼓になったので、ぞめきを求めて更に徘徊する
この日、おそらく最も遅くまで踊っていた会場
ラストスパート、小雨も物ともせず
よく見ると、最初の会場で見かけた人達がここに流れついている。墨田区の盆踊り(それぞれの開始・終了時刻)に精通していて、廻る順番を決めているのだろう
そしてこの頃から、いわゆるボンオドラーの存在に気がつき始めた。揃いの浴衣で端整な踊りを見せるグループに、若い男女がいて、私は例によって勝手な呼び名を付けた――オニッポリ君(俳優の大倉孝二さんに似ている)と姫香さん(和風美女)
その精緻かつ美しい踊りは、その後もあちこちの会場で見かけることとなる
因みに、その後勝手に名付けたボンオドラーさんは――絹代師匠、淑子さん(山口淑子さん似)、村田くん(村田雄浩さん似)、蔵人くん(真木蔵人さん似)、町会さん(何処かの町内会の顔役)、友近さん(はぃよ、そぉれ、と合いの手を入れて賑やかに踊っている)、白シャツくんにブーツさん……
「私たちも、何かあだ名を付けられてるかもね」と妻。「ボンズとオデブじゃないの……」そしていつもの険悪パターン(笑)
墨田のはしご踊り~プラモさんのバハマ
ここはスカイツリーのお膝元、どこでもドアならぬどこでもツリー
牛嶋神社を初めて参拝したのは数年前だ。浅草寺で初詣の後、スカイツリーまで歩こうか、までは良かったが言問橋でケンカとなり、憮然としながら参拝した
だから我が家では「ほら、あのケンカした神社だよ」と言えば牛嶋神社を指すことになっている……というのは、なんの自慢にもならない
神社の牛さん
町内会毎、ということは、一つ一つの盆踊り会場は小さい。そしてどこかの盆踊りに辿り着けば、路地の向こうに隣りの盆踊りの提灯が見えるということだ
参加してみると、会場毎にビミョーに雰囲気が違う――かくて、隣りはどうかな?とハシゴ踊りをすることになる
一件目、ここは6時スタート、開始が一番早い。公園を利用した会場には充分なスペースがあり、家族連れやカップルが石段に腰掛けて焼きそばなんかを食べている。祭りの雰囲気はあるけれど、踊っているのは揃いの浴衣のお姐さんばかり
タムロする子供達、何故踊らない?盆踊りには世代のギャップがあるのだろうか
浴衣のお姐さん(昔の娘さん)に一緒に踊りましょうと手招きされて、妻は輪に入ったけれど……この曲、知らない
運動公園でもやってるはずだよ、と妻のSNSデータを頼りに10分ほど移動
ここは見事に広々とした公園で、地元の人達が思い思いに寛いでいる。でも盆踊りの徴候はカケラもない――間違い情報だった
妻が調べたところによれば、広報に載せたがらない町内会も有るらしい。だから、盆踊り情報は意外と不確かなものが多い
盆踊りは地元の祭礼。余所者が大挙するのを好まない。心情として良く分かる
かつて関西にいた時、岸和田のだんじり祭りを見に行った。これは勇壮で一歩間違うと危険な祭り。祭りを警護する地元住民とルールを守らない観光客との口ゲンカを見た時「余所者、お前が悪いよ!」と思った
祭りは地元のものなのである
さて、とにかく歩けば盆踊りにぶつかるよ。と探した二ヵ所目
ここも踊っているのは揃いの浴衣のおばさんたち――
もっとも、まだ口開けの時間帯。踊り手は徐々に増えて、クライマックスに向かうのだろう
踊り手と違って太鼓には子供や若者が多い
この町内の太鼓と鉦は子供と若い娘さんたち。スレンダーな身体にフィットした祭り装束がなんとも愛らしかった
一方こちらの町内会は、生足のお姐さん 色っぽ過ぎるぜ(汗)
墨田区だから、ご当地音頭でスカイツリー音頭はやるはず、とYouTubeで練習していったけど、この音頭、振り付けが2種類あるんだね。勝手が違ってオロオロ
最後に訪れた町会で、やっと練習した方の踊りを見つけた。最後に皆で手を上げて真ん中に集まる振り付け
得意になって参加
振り付けが違うといえば「毬と殿様」も2種類ある
私の苦手な「バハマ・ママ」――そのまま炭坑節の振り付けで踊っている町会があって、大喜びで参加した
実際、4拍子の曲であればそのまま盆踊りに乗せることは可能で、私はラジオ体操の歌で東京音頭を踊ったりしている
町会毎に選曲はアレンジされていて、今年の目玉はキャリーぱみゅぱみゅ、という処もあった。婦人会のおばさん達、練習会でがんばって覚えたんだろうね
恋するフォーチュンクッキーはけっこう定番化されている。元々みんなで踊りましょうというコンセプトの曲だから輪踊りにも合っているのかも知れない
荻野目洋子のダンシングヒーローもあちこちで踊られている。30年も前のダンスミュージックが手拍子しゃんしゃんの盆踊りにアレンジされて残っている――当時青春期だった私にとって、何とも不思議な感慨がある
私がバハマ・ママを苦手、という理由――それはこの曲の振り付けが尻振りダンスだからである。でもこの踊りは若い人には人気で、これが掛かると踊りの輪に若者が増える
浴衣は着物の簡易版――浴衣姿でカジュアルに日本舞踊を楽しみましょう、というのが盆踊り
だから私は盆踊りに、その手捌き足捌きに日本芸能の美しさを見たい。私の知る限り、尻をくねらせる日本舞踊なんてない
日本は戦争でアメリカに負けてから、尻を振る民族になってしまった――という私のボヤキは「あんたウザイのよ」という妻の一言で一蹴される
さて、踊りの輪の中に、穴八幡での無気力姐さんのような女性がいた。紺の浴衣を粋に着こなし、手捌きも優美だが動きは小さい
つるりとした顔立ちと稼働域の狭さ――勝手にプラモさんと名付けてみた
私はバハマが掛かると輪から外れる。さて、プラモさんは?と見ると――器用に振り付けをなぞっている。でもお尻は振らない。膝を曲げて腰を左右にカクカク折るのである――
なるほど、これが日本舞踊の応用なのか
これなら、見ていて美しい。抑制された色気がある
そのプラモさんを飽かずに眺めていると「あんたウザイのよ」と妻に二蹴された
さて、時刻も8時半を廻ってくる、あちこちの町会がお開きになっていく
終了間近、神社の境内に辿り着いた
盛況で、輪に入り込む隙間もない
ぼんやり眺めていると、最後に締太鼓の演技があって9時終了
踊れなかったけど神社の出口で
お菓子もろた
楽しかったねえと駐車場に戻りかけると、微かに祭り囃子が聞こえる
なんと、9時を廻っても踊っている町内会があった
終焉に向けてヒートアップする踊りの輪
ここの町会には生きのいい若衆が大勢いて、空気全体がどよめいている
幹事の兄さんが最後に挨拶「明日も演ります。雨が降っても演ります!」
その威勢は甲子園に駆けつける地元の応援団長のようであった
9時半もはるかに廻って……祭りのあと
私が生まれ育った北海道の田舎町では、こんな町内会盆踊りはなかった。小学校のグラウンドでの役場の盆踊り大会があったことだけ、微かに記憶がある
この墨田区で地元住民として踊りに加わりたかったなあ、と思いつつ……
翌日に続く