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空はどこから

地味に日記を書いていきます

星の娘たち~仙台の花童

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岩手県にいた頃、一番遠い現場は栃木県の山間部だった。片道460キロ、東北自動車道を延々と南下する。遠かった。走っていて飽きた。音楽だけでは間が持たなくて落語のCDを積んでいた。同じ演目の同じくだりで何度もア八八と笑った

仙台市に初めて車で乗り入れた時、その道路の複雑さに戸惑った。私は北海道・屯田兵が開拓した町で育っているから、川や岡などの地形の制約がない限り、道路は真っ直ぐ、碁盤の目。仙台は城下町、中心街こそ整備されているが、ちょっと郊外に行くとカーブだらけ。交差点はカーブとカーブが交わっている。なる程、これが城下町――敵の襲来から守る町作り――なのか、と思った

熊本市に初めて車で入った時、直感的に「仙台と似てる」と思った。そこにはきっと(私が住んだことのない)「城下町」の雰囲気があるのだろう

 

その仙台に熊本から花童が来る!

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花童ファンクラブ関東支部――自称(笑)――として、これが行かずにいらりょうか! 3月29日、水曜日。年度末の平日はいささかキツかったけれど、とにかく2ヶ月前から予定を入れた

とはいえ、千葉県と仙台はなかなかに遠い。最初は新幹線も考えたが、勝手知ったる東北道、妻と二人、ドライブと思えば退屈もしないだろうと車で行くことにした。行きは音楽を聴きながら――花童の十八番でもある『芸者ワルツ』に『祇園小唄』(私は はん子姐さんと二三吉姐さんのファン)――『くまもと音頭』や『火の国旅情』など、熊本の曲も流したいところだけど、これはまだ音源持ってない

途中、福島のSAで一服

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あたたら山、頂上は霞んで見えず
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あれが安達太良山 あの光るのが阿武隈川……

そういえば、岩手県高村光太郎の住居跡を訪ねたことがあった。郊外にポツンと残されたアトリエのある木造住宅は、鉄骨ですっぽりと覆われていた。情緒というよりも、何としてもこれ(光太郎の暮らした痕跡)を遺すぞ!という執念を感じた

 

さて花童――『東日本大震災七回忌追善公演・ふるさとの春まつり』

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(記憶を確認する写真がなく、うろ覚えの記載です)

一曲目の『平泉讃歌』など七つの演目中、四曲が おのりく氏の作詞。九州出身、東北の復興支援に尽力し、わずか38才で急逝した――二つの震災を繋ぐキーパーソンであるらしい。会場にはご両親が駆けつけ、MCの紹介を受けて観客席で立ち上がり、四方に丁寧に頭を下げておられた

花童の年長さん3人は最初は袴の壮士、次には打掛の煌びやかなお姫様衣装で舞い、凛々しさと華やかさをステージいっぱいに表現した

ステージ中央には円形の台が設置され、後方にはひな壇が組まれている。それらを立体的に利用して奥行きのある舞踊が展開する

こわらベ四人の『おてもやん』は円形の台にかなちゃん、両サイドにゆうあちゃん・れいなちゃん、そして後ろのひな壇できみかちゃんが踊る。遠近法も手伝って、きみちゃんは増々華奢で、遠くの星・小さな妖精を見るようだった

六曲目の『七タ抒情』では退場際、照明が落ちると、灯籠と衣装から小さな星がキラキラと瞬いた

リストに『田原坂』があるのをみて、YouTubeにあった ゆる~い殺陣が観られるかな?と思っていたら、この曲で花童は登場せず、そして次の曲も――結局三つの演目が花童抜きだった

う~ん、ここまで出かけてきて、四曲だけではチトつらい。後はエンディング待ちだなあ

 

で、2部のミュージカル『オルゴーランド』

これは一言でいうと(こんな括りかたで良いかどうかは分からないけれど)テーマは『銀河鉄道の夜』――亡くなった愛しい者と旅をするメルヘン――である

劇中、様々な異形の者が登場する。その終盤、アンパンマム――人々の悲しみを吸い取っては眠りにつく、癒やしの母性――が現れる

そして、花童が白装束で静々と登場する

f:id:faimil:20170330173355j:image円形のステージに 立つアンパンマムと、それを取り囲む七人の白い妖精

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その練習風景

(写真はいずれも制作スタッフ・濱中文夫さんのFBからお借りしました)

『星娘』という言葉が頭に浮かんだ

ここは仙台……七夕―星祭り―亡くしたものへの追慕

演出者の意図は分からないが、今回の花童のコンセプトは星娘だったんだな、と勝手に思う。そして私もまた、そんな花童を観るために、360キロの道のりを駆けてきた

 

さて、話は第一部に戻って――年長さん3人とMCとのトーク。並んだ背の高さが あやのちゃん→ゆりあちゃん→あかねちゃんで斜めに一直線。いつの間にか、あやのちゃんの背丈が一番小さくなっている。あやのちゃん、生で観るのは初めて。その存在感、艶のある踊りが印象深かったので、意外と小柄だなあ、と思った。いや、あかねちゃん・ゆりあちゃんが伸びたんだ、背丈も伎倆も

 トークの中で、花童はみんなで折った千羽鶴を持参してきた、という話題となった

その千羽鶴を抱きかかえて舞台袖から きみちゃんが登場する――会場中から「ほう~」という感歎の声が洩れた

宙を進むような揺れのない歩み方。白い衣装に色とりどりの折鶴を纏うように巻き付けている――その姿は天女が使わした童子のよう――小さな女の子は愛らしいに決まっている、でもその娘が日本舞踊の所作で淑やかな仕草を見せたなら――それはもうただの愛らしさを超えた、何か別のもの。これが日本舞踊の底力、鍛練のたまものなのか……

千羽鶴はその後、ロビーの募金箱の脇に飾られた。身近に見ると、思いのほか小さくて驚いた
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帰り道は音楽をかけず、余韻に浸りながら。花童の踊り、もっとたくさん観たかった、とは思う。でも、仙台で観た花童=星娘。結果として、満足だったな……とも思う