お東さんとお西さん
滅多にないのだけれど、京都で会合に出席した。一回目は8月だった。同僚の車で京都駅まで移動中「ここで停めて……オレの本山なんだ」そして一人で参拝した――そこは真宗大谷派、京風に言うと「お東さん」、つまり東本願寺
夏バテ真っ最中、でも本堂はうっすらと冷気(霊気)があり、時折吹き込む風が涼やかである
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつ なんまん……
子どもの頃から見よう見まねで覚えたお念仏を唱える
そして今日、再び「ここで止めてよ」「ああ、本願寺ですね」
なんか、大きな旗が飾ってあるなあ、おまつりかしらん?
震災復興祈願の看板も前回と違う
イチョウのライトアップ、黄葉がきれい
イチョウの大木は滋養をたっぷりと蓄えている。生命力の象徴だ
本堂にはびっしりと椅子が並べられていた。なにかイベントでもあったのかな
最前列、椅子の前に正座して仏壇に手を合わせる。礼拝はやっぱり正座で行いたい、これからも膝が曲がる限り、私は正座する
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつなんまん……
頭蓋骨を風が通り抜け、鼻の奥がスカスカする、そのままずっと座っていたい
私と同じクチだろう、やっぱり正座でなきゃ、とおばさんが座る。なんまいだ~なんまいだ~と隣から声が聞こえる
立ち上がって振り替えると、ごつい白人が3人、カメラをぶら下げてもの珍しそうに立っている
Don't photo!と言ってやろうかと思ったけど、やめた。もし有り難みの分からない者であれば、何を言っても 無駄である……
山門を潜って駅へと向かう――いくらなんでも気がついた。
ここは本願寺派――お西さんじゃないか!
ファイミルの宗教心もこんなもの。西も東も分からない
お東さんへと向かう。もう夕刻5時は過ぎている
閉まった門前で、僅かばかりの南無阿弥陀仏
振り向くとスカイツリー
……ならぬ京都タワー
こんなことを思い出した。アニメ『茄子アンダルシアの夏』の続編『茄子スーツケースの渡り鳥』――舞台は日本、栃木県。イタリアの競輪選手達が縁あって日光のお寺を訪れる。廊下を伝い、障子の開いた本堂を横切る。金襴の仏壇を「ふーん?」と眺める
そこで和尚さんの活が入る
「異国の者でも、尊きものの価値は分かろう。手を合わせなさい」
20代後半、イギリスのウィンチェスター大聖堂を訪れたことがある。ジェーン・オースティンの足跡を訪ねたついでだ。何にも知らないで入って、カンパがわりでクリスマスキャロルのカセットテープを買った。売り子の金髪のお姉ちゃんが、アジアの異教徒ににっこり微笑んだ
伽藍の宏大な空間に立った時、涼やかな空気を感じ、鼻の奥がスカスカした
なにさまの おわしますかは 知らねども
かたじけなさに 涙こぼるる(西行)
神社仏閣(霊域)に惹かれる心情――この短歌ほど見事に表現した言葉を、私は知らない