トロット師匠と無気力姐さん
9月に入っても、けっこう東京各地で盆踊りを開催している
9月なのに盆?――正式には「奉納踊り」という
でも、例によって日本人はテキトーだから、輪になって踊れば「盆踊り」
9月10日、早稲田の穴八幡神社盆踊り
そこは東京の西側――自称・葛飾柴又の住人、ファイミルにはチト遠い
でもネットではなかなかに評判が良い「同じ曲を2回ずつ流すから初心者でも覚えやすいですよ」
定番の東京音頭、炭坑節に八木節
ドンパン節、花笠音頭……曲は知ってる。どんな振り付けだろ
ハワイ音頭……なんだそれは?
盆踊りは本来、神事(仏事)……ライトアップされた境内には、賑やかさと同時に一種の荘厳さがある
八幡様は源氏の神様。参道の階段には勇ましい流鏑馬(やぶさめ)の像がある
石段を下れば、そこにはハイソな?雑然とした?東京、都会の喧騒
樹木に遮られたこの高台の一角は別世界のようだ
そしてそんな神域を何となく有難く感じて残している処に、日本人の奥床しい宗教観(信心の心)がある
開始時刻前、リハーサルの音楽がスピーカーから流れ、太鼓の練習が始まる
早く始まんないかな~、と身体を揺すってじりじりする人がちらほら
そして
この日先陣を切ったのは、ショートカット、浴衣の襟元が粋な昔の娘さん(地元のおあ姐さん)。それ続け!とばかりに後ろに連なるファイミル夫妻、他数名
そして、やがてー重の輪が出来ていく
そしてー重が二重に
やがては腕を広げる隙間もないほどの盛況ぶり!……その写真はない、踊りに夢中で撮るの忘れた
思い思いの浴衣を粋に着こなした地元の人もいれば、洋装でたどたどしく踊りをマネる飛び入りもいっぱい
そんな中、ヤグラで踊る年配のお師匠さんが見事だった。まさにお手本
みんなヤグラの方を向いている――これは花笠音頭の糸巻きのポーズだね
このお師匠さん、白髪を薄茶のメッシュに染め、トンボ柄の紺の浴衣はこれが普段着、とばかりにこなれている
その足さばきの軽快さはまるで馬のトロット(軽走)を見るようだ。誰よりも運動量の多い踊りをこなしながら、ヤグラ下の飛び入りさん達に「腕をかざして、2歩下がって、はいがんばって」とアドバイスしている
その八面六臂の活躍ぶり!
そしてこのヤグラの上には、もう体型も崩れ腰も曲がりかけた年配の女性もいた。ところがこの人の踊りがまた、見事にこなれていて美しいのである
なんだか、盆踊り≒日本舞踊の真髄を垣間見たようで、無性に愉しくなった
というところで終わらないのがこの日のネタ
第二部『無気力姐さん編』
私達の眼の前に、揃いの浴衣を着た二人のお姐さんがいた。二人とも粋な姐さんで、例えるなら一昔前の島かおりさんと真屋順子さん
この姐さん達の踊りが、驚くほど小さい。腕を後ろに伸ばすはずの振り付けでも、その手は胸元に小さく納まっている。足運びはまるでリハビリのような歩幅、圧倒的な運動量の少なさ
これが一人なら個性だけれど、二人おんなじ動き、そして完成度が高い――何かの流派なのだろうか
パッと見、とても楽しそうには見えない。でも二人飽かずに黙々と踊っている
なんだこりゃ?と私が思ったハワイ音頭のフラダンス風の振り付けも達者に(かつコンパクトに)こなしている
私に言わせれば、盆踊りとは単調な振り付けを延々と続けることで、一種のトランス状態となる「神事」
この二人の「無気力姐さん」の、精確に刻み続けるような踊りを見ていると、これって盆踊りの原点かもね、とも思えてくる
やがて踊りが最高潮となる頃には、輪も会場いっぱいとなって、もはや腕を伸ばすスペースもない
私の踊りも次第に小さくなり、気がつくと姐さん達と同じ団地サイズの踊りになっていた
そうか、あの姐さん達、戦後の都会人――根っからの「団地っ子」なんだ!?
という発見の、真偽の程は分からない……
因みに、YouTubeで盆踊りを見ていたら、少し前の日比谷公園盆踊りの映像に、無気力姐さんが映っていた。踊る後ろ姿ですぐ分かった
日比谷まで出掛けるとは――無気力姐さん、決して無気力ではなかった(笑)
おまけ
7月にテレビが壊れて買い換えたら、アプリ機能が付いていた。テレビの画面でYouTubeが見れるというのはなかなか快適で、今やTV番組よりもYouTubeで盆踊り動画を見る方が多くなった
今年の映像もポツポツ公開されている
あっ、これ行ったよねw、と見ていたら……
ファイミル夫妻、とうとうYouTubeデビューを果たしていました
画面を通して見るおのが姿に……とうとうた~らりアブラ汗