日比谷の空~丸の内音頭を踊る
東京音頭の原型は「丸の内音頭」だったらしい
その歌詞に東京の他の地域の風俗を足し込んで東京全部の歌になった
そして東京音頭をレコーディングしたのは勝太郎姐さんだが、丸の内音頭は二三吉姐さんだったらしい
藤本二三吉、江戸芸の巨星にして……私の端唄のお師匠さん(勝手に言ってるw)
ウィキペディアで調べたら、丸の内音頭の初回の盆踊り大会は有料で、百貨店で浴衣を買った人しか参加出来なかった――と永井荷風が書いているらしい
荷風さん――過去に小説何編かと佐藤春男が書いた『永井荷風伝』を読んだ。あんまり好きになれなかった。なんだかエラそうなオヤジだなあ、と思った
今、東京に馴染んでみると、荷風さんが活写する「東京市(~1943年までの東京)」の風俗が実に良くって、また読み始めている
日比谷の盆踊りが凄いらしいよ、とネットを調べた妻が言うので行ってみた
8月26日のことだ
日比谷公園――私はこの公園が大好きで、霞ヶ関方面に用事があった時など、寸暇があると散策する
林学博士にして近代公園の父、本多静六が設計した、日本で最初の市民のための洋風広場
本多博士は現在の日比谷交差点にあったイチョウの大木を「自分の首を賭けても移植を成功させてみせる」とし、見事日比谷公園内に活着させた――というのは知る人ぞ知るエピソード
昨年冬の、鍋フェスの時撮った
隔絶された都会の一角なのに、地域猫≒公園猫が住みついている
こいつとか
こいつ
さて、盆踊り――噴水を囲んだ巨大な輪
ライトアップも幻想的
何しろ東京ど真ん中、揃いの浴衣のオア姐さんもいたけど、私服の飛び入りも多い
勤め帰りのOLとかサラリーマンとか(私もその一人)
踊りの輪に加わる際、大切なのはお手本(≒お師匠さん)探し
何しろまだ振り付けを覚えていない
上手な人をみながら振りコピしなきゃならない
周りがみんな下手な人だったら目も当てられない
手足はバラバラ、のそのそと歩くだけになってしまう
上手な人、といってもアヤのつきすぎている人だと、踊りはキレイでも参考にならない。基本形が分からない
男性はあまりアヤをつけないから、振り付けのお手本としては参考にしやすい
揃いの浴衣を着ている「昔の娘さん」の中には、踊りが上手な人はほとんどいない。老後の趣味で日本舞踊のサークルに入りましたという感じ
その中に、師範代?というような踊りのしっかりしたお姐さんが混じっている
そんなヒトは浴衣の着こなしも粋である
この日、私が手本とした中で、一番見やすかったのはそんな小粋なお姐さんだった
炭鉱節
振り付けは炭鉱の重労働をなぞっている――スコップで石炭を掘り、モッコを担ぎ、トロッコを押す
これを浴衣のアダなお姐さんが踊るところに、得も言われぬ倒錯感、色気が生まれる
一方、八木節は男踊りだね
曲調が武骨で振り付けもストイックだ
何やら、ゴジラのテーマソングのように、おどろしく迫ってくる感じがある
そしてもうー曲、この日比谷盆踊りで流れるご当地ソングは「銀座カンカン娘」
この曲、昔から好きで良く聞いていた
これが盆踊りソングになるとは思いもしなかった
でも振り付けがポップで覚えづらい
踊るのを諦めて輪を抜け出し、お師匠さんを見ていると
「指を差されてカンカン娘~♪」でチョイチョイと指差しポーズをする
粋なお姐さんがやると見事にきまる
カンカン娘は戦後まもなくの、洋装で闊歩する蓮っ葉娘の威勢のいい歌
それを小粋な姐さんが浴衣で踊る日本舞踊にしてしまう
日本人ってホント、適当で暢気な民族なのである
そんな訳で、東京市・盆踊りの原点、日比谷のー夜、楽しゅうござんした
因みに、この会場では日本手拭いを売っていた
これをお揃いで首に掛けると、踊り手になんとなく一体感が生まれる
手拭いには丸之内音頭の歌詞が書いてある
粋だね、と眺めていたら――
こらこら!
我が家の地域猫w