空はどこから

地味に日記を書いていきます

誰かさんの誕生日

ニュースを見ていて、23日が皇太子さんの誕生日と知った

あれ?

そうだよ、私と同じ日だよ――と妻

いずれ、日本中が休みを取ってお祝いしてくれるね、おめでたいね

 

そういえば、妻の友人に某国の前の首領様と同じ誕生日の女性がいた

当日は御主人が「一人マスゲーム」をしてお祝いしてくれたそうだ ……ん?

私にはそんな芸がないから、静かに外食をして、ちょっとケーキ

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ここ数年、ケーキはアンリ・シャルパンティエと決めている。いつも松屋の地下で買う。深い意味はないが、妻は前世フランス人である……たぶん

花はね、猫が食べてゲロを吐くから、長いこと買ってない

普段は外に置いている梅の木

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部屋に入れたら即効、餌食

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「ね子はかすがい」と言うけれど(?)

こいつらが居なかったらとっくに破綻していたかも知れないな……

 

先日、旅先で「ラーメンでも食べようか」と言ったら「ダイエットでカロリー控えてるのにラーメンを無理強いした」と不機嫌になった。「嫌ならそう言えばいいのに」と返してももはや理屈は通じず、その後しばらく、お互い口を利かなかった

仕事で出張する度、お菓子とかチーズとかのお土産を買って帰る。ケンカになると「そんなもんで騙されないわよ!」と言われる……騙すって、ナンだよ?

ああ、誰かと暮らすって面倒くさい

でも、誰かとペアで居るって……楽だ!

 

まあ、おめでたい日だからグチめいた話は程々に――

Happy Birthday

皇太子さんと……我が家の古猫

しょせん観光客、なれど……熊本城復興に思う

熊本城を背景に、坪井川付近。正面には清正公の銅像
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これは清正公が築城を指揮した時の装いらしい
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そこから見える、崩れた石垣
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観光客が近寄って写真を撮っている。それは災難を他人事として「見物」している姿に見える

f:id:faimil:20170107071749j:imageそして私もその一人……

行幸橋を渡って桜の馬場・城彩苑へ

 

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歴史オタというほどではないが、私も年相応に歴史好きではある。でもここに来た目的は城彩苑湧々座の花童公演f:id:faimil:20170106190223j:image

被災した熊本城を見たかった訳ではない

湧々座の脇に復興城主(寄付金)の受付コーナーがある
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それを横目に会館内へ
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極彩色、虎退治の清正像
その近くに視聴覚コーナーがあった。『今、熊本城の中で何が起きているのか?』――被災状況を克明に撮影した映像が綴られていた
そのー枚――
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これを見たとき、ああこれはダメだ、と思った。こんなもの、どうやって復元するのだ

 展示会場を抜け出して、復興城主の申し込みコーナーに戻った

圧倒的な暴力に曝されたこの状況――復元なんて出来るんですか?

「20年掛かります」スタッフの男性が言った

20年……こつこつ、こつこつ……この地の人々は、石垣を組み直し暴力の傷痕を癒していくのだろう

申し込みをすると、震災前後の城の写真集を渡されたf:id:faimil:20170107080936j:image

熊本城本丸御殿――f:id:faimil:20170106122404j:image

花童の名作動画が数多く残されている、憧れの舞台。もちろん閉鎖されている
ここで私が花童を観れるのは、いつのことになるのだろう

 

熊本の被災に対し、私はしょせん物見遊山の観光客、他人である

でも、来て、見る、ということは、寄り添うということの、小さな、ほんの小さな一つなのかもしれない

城彩苑で見つけた写真――

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くまモンが城壁を直している

こつこつ、こつこつ……

水前寺公園 清水でタンタン♪

熊本の地名は元は「隈本」。清正公(せいしょうこう)さん――この地では加藤清正をこう呼ぶ――が、もっとカッコイイ地名がいいや、ということで「熊」の字になった

隈本の語源は幾つかあるが、一説では「曲がりくねった川のあるところ」であるらしい。つまり、くまもととは、水が豊かな土地、という意味である――

24日、予定は夕方の湧々座のみ。そのあと空港に走って羽田に戻る。まず城彩苑の駐車場を確保して……さてどうしよう

水前寺公園って熊本市内だったよね――路面電車で行けるんだ

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チンチンチンと電車に揺られて公園前へ。水路の脇を入園口へと辿る。その水路を覗き込んで驚いた。水がとてつもなく澄んでいる
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悠然と泳ぐ鯉に翳りを与えるのは水紋のみ。下水の濁りを想像していたので呆気に取られる。前日の江津湖でも思ったけど、隈本はホントに水清き土地である

水前寺公園・成趣園の樹木が見えてくf:id:faimil:20170103184756j:imageよく見ると くまモンもお出迎え(笑)

ああ、ここだよ!この風景をバックに花童が踊っていたf:id:faimil:20170103184827j:image一昨年のYouTube動画では粉雪の舞う中、くるみちゃんとあやのちゃんが優雅に扇を揺らして踊っていた。そして背景を白い鳥が何羽も横切った

園内の能楽堂。戸板の奥を覗き込むと、松の背景図が見えた

f:id:faimil:20170103184921j:imageあ、能楽堂って……あの能楽堂だよ!この公園にあったのか

花童は下手の渡り廊下から登場し、この松の舞台で踊っていた。ああ、生で観たいなあ

池の水はあくまで清澄、鯉もろとも飲んでみたい
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水前寺公園 清水でタンタン♪ 口ずさんでみる

突然、バサバサと羽音。水鳥が先を争うように水面すれすれを飛んでいく――対岸には鯉に餌を撒いているアベック。その餌を目指して特攻しているのだ

正面から見てみたいな――売店で餌(麸)を仕入れて水辺でばらまいてみると

来た!f:id:faimil:20170103185500j:image

来た来た~!f:id:faimil:20170103185157j:image

シュパパパ~f:id:faimil:20170103185512j:image

阿鼻叫喚f:id:faimil:20170103185526j:image

こちらはアオサギ、お大尽風情で乙に澄ましている。スマホを構えてソロリソロリ
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逃げられた
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公園内のお土産店
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こんな本を見つけたf:id:faimil:20170104124648j:image

パラパラめくると『牛深ハイヤ』の由来が載っている。異郷で地元出版の本を探すのが好きなタチなので、買おうと店員さんを探すと――花童の絵はがきが貼ってあるのが眼に留まった。出てきたおばさん(ここの店主さん)に花童の話題を振ると、俄然話が盛り上がった――「写真あるからあげますよ」引き出しの中をごそごそして、見つかった写真――それは奇しくも、今はメンバーにいないあやのちゃん、東島姉妹の生写真だった。探してくれている間、ふと後ろの棚を振り向くと、カワイイ娘さんと目があったので……連れて帰った

f:id:faimil:20170104124658j:imageおてもやん

「玄宅寺って、この近くですか?」妻が聞くと「すぐ裏ですよ」

行ってみたf:id:faimil:20170103184943j:image

玄宅寺では花童の月例舞踊会が開催されている。でも木曜日なのでなかなか観れそうにない
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ああ~熊本に住んでいればなぁ

この日、何度目かのため息……

わくわくこわらべ ~ 熊本城・城彩苑にて

23日、益城町での奉納踊りの後、熊本城に直行――桜の馬場・城彩苑「湧々座《わくわくざ)」――ここで花童の定期公演が開催される

次の24日も続けて観たので、記憶も写真も2日分ゴッチャである(笑)

ここは歴史文化体験施設なので、演目も熊本所縁のものが選ばれている。3部構成で2部にはタレントさんによる歴史紹介コントが組み込まれている

 

まずは『肥後のタンタン節』――こわらべ達が鼓を持って登場する

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小さな身体で鼓を構える姿が凛々しくて、私の大のお気に入りシーン

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そしてくるみちゃん(月若さん)が扇を優雅に舞わせて登場する

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こわらべは途中、鼓を提灯に――

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そして扇に持ち替える

熊本の名所・名物を「タンタン」の音で軽快に紹介していく――ステージの導入部にぴったりの曲である

『おいでまっせ』――これは わらべ歌「あんたがたどこさ」の大人版のような曲。歌詞に先場山の狸が出てくる

みかちゃん
f:id:faimil:20170102022748j:imageポンポコたぬき

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と――上手端で ゆうあちゃんがピース・サイン!  え?そんな日本舞踊ある?f:id:faimil:20170101234148j:image

と驚いてたら……かなちゃんとれいなちゃんも両手ピース!?

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歌詞を良く聞くと、これは洗場川の蝦(ザリガニ?)のポーズ。ピースじゃなくてハサミだった

 

『おてもやん』――言わずと知れた熊本の代表作。こわらべのYouTubeでも名作が多い

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気の良い娘・おてもやんの恋の苦悩?――こわらベが演じると何とも微笑ましい

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MCで花童のメンバーは7歳から20歳~と紹介され――そうか、くるみちゃん(月若さん)も二十歳になったのか、と感慨深かった

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実物を見たのはこの日が初めてなんだけどね(汗)――YouTubeで6年分を追っているから初見な感じがしないのである

 

みことちゃん・あやかちゃんはここでもコンビの演目

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そして月若さんとトリオでf:id:faimil:20170101234709j:image

こわらべの娘たちの日本舞踊への情熱は、くるみさんに憧れることから始まった
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このか細い背中――この娘たちの眼には、さぞかし広く大きく見えていることだろう

『くまもと音頭』――これはタンタンとは逆にエンディング曲の定番

こわらべのラインダンス(?)――手に持つのは春は桜、秋は紅葉の枝
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湧々座では、2部の最後にMC・熊八どんの指導が入る「くまもと音頭ではバックスクリーンに歌詞が映りますので、皆さん元気に歌いましょう」――YouTubeで耳慣れた曲、ホントに元気に歌ったら、熊八どんに褒められた(笑)

 

この熊八どん、明るいのはもちろんのこと、実にフレンドリーな人で、湧々座のことなど詳しく教えてくれて、玄関まで送ってくれた

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2日目は大工の源さんになっていたf:id:faimil:20170102065933j:imageこの日も終演後、玄関まで送ってくれたので「熊八どん、2日間お世話になりました」とお礼を言うと「今は源さんです」――二人してにっこり笑った

 

さて、熊八どんの采配で終演後に記念写真を撮ってもらった

f:id:faimil:20170101181952j:image実はこの写真にはファイミル夫妻も撮っていた――両サイドに座った姿は……まるで花童の脇の狛犬のようであった

もう一枚「おいでまっせ!」のポーズf:id:faimil:20170101182028j:image

YouTubeでは首を横に傾げる仕草だったのが、今は両手を広げる、よりアクションの大きなボーズになっているらしい

これ、良く見ると

f:id:faimil:20170101181907j:image……少しはお愛想しなさいよ(笑)

 

でも私は――この表情に「清潔」を感じるのである。純真とか無垢とか情緒的な言葉よりも、私は清潔という言葉を使いたい

この娘がいつか私の前で笑ったら、それはこの娘が本心から寛いでいる時である 

奉納、花童 ~ 益城町にて

舞踏とは多かれ少なかれ「神事」としての要素を含んでいる

日々の精進を積み重ねた花童の踊りには、時として「神が降りているのかな」と思わせることがある

12月23日、益城町にて天皇誕生日祝賀・震災復興祈願イベント

やっと叶った。初めて生で観る こわらべf:id:faimil:20161230205353j:image……日本人形が踊っている

前回、東京の舞台で初めて あかねちゃん・ゆりあちゃんの娘踊りを観た、あまりのキレイさに驚いた。だから花童が大挙して眼前に現れたら、卒倒してしまうんじゃないか、と思った w

まずはくるみちゃん(月若さん)とゆりあちゃんが登場

f:id:faimil:20161230205216j:image月若さん、さすがに踊りの線が美しかった。全身が舞踊の鍛錬によって練り込まれている感じがする

そして こわらべ五花撰――かな・ゆうあ・れいな・きみか・すずが登場するf:id:faimil:20161230205413j:image

花童定番、熊本名物『おてもやん』f:id:faimil:20161230205314j:image五者五様の「おてもやん」――その個性を観るのも愉しい

花誠先生は敢えてこの娘たちの癖を「矯正」していないのではないかと思う。同じ振り付けを習っていながら、この娘たちの踊りは一人ひとりに個性がある。ラインダンスのように画一的に揃えてしまってはつまらない。「みんな違って、みんないい」というのは日本人の持つ美意識の特長かな、とも思う

みことちゃん・あやかちゃんの『因幡大黒舞』 f:id:faimil:20161231195254j:imageこの二人は遅れてきたヒロイン。今、懸命に花童の階段を駆け上がろうとしている。この衣装と踊りが意外と似合っていて、あやかちゃんが美少年(?)に見えた

阿波踊り』――本場徳島で見たことがあるので、この手捌き・足捌きには違和感があった。でも実際にステージで観ると、目まぐるしく変化するフォーメーションが面白い

そして、この奴ダコポーズが愛らしいf:id:faimil:20161231195328j:image

阿波踊り、或いは秋田県の西馬音内(にしもない)盆踊りなど、日本の踊りには、顔を隠すコスチュームも多いf:id:faimil:20161231195338j:image表情を見せないことで神秘性を高める。これも日本人が好む舞踊の特長、霊異を感じさせる演出かな、と思う

でも、YouTubeで百時間余り花童を観ている私にとっては、一人ひとりの個性――体格はもとより、腰の低さ・背の屈め方で、誰が誰だか何となく見当が付く

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舞踊とは神事――祈りである、今回の震災復興イベントから、その例を拾ってみた。

これはメドレー『肥後の通り名』にも入っている曲……YouTubeで調べてみたが曲名は分からなかった

f:id:faimil:20161231195239j:image石は吊って持つ吊って持つ石は~♪

f:id:faimil:20161230205253j:image天守櫓の石垣見上げ~♪

……この石垣を積み上げるような振り付け、今見ると、熊本城の武者返しの復活を思わせる

そしてラストのー曲は『365歩のマーチ』――言わずと知れた水前寺清子さんの名曲

熊本と言えば水前寺

f:id:faimil:20161231204141j:image熊本市内・水前寺公園成趣園……と、くまモンw)

――今の熊本にピッタリの、そして花童の娘たちにピッタリの  「CheerUp (元気づける)ソング」だなあ、と思う

f:id:faimil:20161230205509j:imageあなたの付けた足跡にゃ~ ♪
f:id:faimil:20161230205547j:imageキレイな花が咲くでしょう♪

f:id:faimil:20161231195316j:image腕を振って足を上げてワンツーワンツー♪

f:id:faimil:20161230205459j:image休まないで歩け~♪

江津湖から益城町へ~震災のかさぶた

とにかくもう、花童が観たくて観たくて、計画した九州旅行。22日は始発電車で羽田へ向かい、福岡空港からレンタカーで佐賀県へ――妻の積年の望みだった有田焼の本場を見るためだ。その夜の内に熊本市内へ……九州を少しばかり甘くみていた。遠かった(汗)

翌日、10時過ぎにホテルを出発。花童が出演する益城町でのイベントは14時から。その間、何の目的もない。

ルートの途中に江津湖があるので寄ってみた

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ついでに、江津湖音頭も踊ってみた

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ここは市民の憩いの公園になっていて――
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スワンボートならぬ、くまモンボート

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とにかく、水がきれいだった。上流から流れ込む他に、湖底からの湧き水も多いらしい。都会に近い公園で、水がこれ程澄んでいる場所は他に知らない

野鳥の楽園。野鳥観察の会が活動していた

この鳥(名前は)何ですか?とその内の一人に尋ねると

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大きなのがアオサギ、小さいのがコサギですよ。ほら、足先が黄色いでしょ、それがシラサギとの違いです――説明しながら、幸せそうな笑顔w

ああ、天下太平である……寒かったけど

 

そして――これに気づく

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 盛り上がった遊歩道、芝生の亀裂

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歪んだ堤、立ち入り禁止のテープ

ああ、震災があったんだ……

震災直後、銀座のくまもと館には行った。でも、私の日常に震災の影はない

益城町へと向かう、沿線に目立って更地が増えてくる

あ!ましきまち……ニュースで何度も耳にした激震地じゃないか

目的地に近づくにつれ、車窓の景色に違和感がつのる。街並みがどことなく、歪んでいるのである

折れた家屋
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傾いた祠
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崩れ落ちた壁、竹の骨材が露になっている
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次々と現れる更地。地表に出来たかさぶたのようだ f:id:faimil:20161228170653j:image

見上げると、クレーンの鉄柱が斜めに何本もニョキリと立っていたf:id:faimil:20161231000957j:image

目的地、益城町文化会館。早く着いたので裏手に廻ってみた f:id:faimil:20161228170627j:image

ホールの裏手階段も崩れている
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このホールで開催されたイベント『天皇誕生日奉祝式典 被災地ご訪問感謝の集い』

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受付で記名しているとテレビ局のレポーターに声を掛けられた

「どちらからおいでですか?」「このような慶賀の式典に興味はおありですか?」

「いえ、私は花童を観に来ただけで……他には何も(考えてなかったです)」

レポーターはそのままお辞儀して去っていった
天皇誕生日と震災復興を兼ねたイベント。舞台上に居並ぶ来賓各位、そして祝辞
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その中で、地元益城町の女性が舞台袖から現われ、スピーチの壇上に立った

――震災後、先行きに希望のない避難所生活を送る中、天皇陛下が慰問に来られると聞いた……当日、空を見上げていると、やがて小さな点が現れた。天皇陛下が乗ったヘリコプターだ。その点が次第に大きくなってくる。それを見たとき……ああ、私はもう大丈夫だ、と思った――

 

災害とは、限られた一部の人にのみもたらされる。被災した人はたまたま運が悪かった人、「災難」の人である。熊本県内だけで見ても、被災者の人口比は僅かだろう。遠く離れた地に住んでいれば現実味は薄い

災難に遭った一部の不運な人々に対し、社会がどれだけ同情の想いを寄せているか――それがコミュニティとしての豊かさ、民度の高さのバロメーターである

天皇国民の幸せを真摯に祈り続けている人である――不運な人に思いを寄せ、助け合える社会を理想とするのであれば、天皇の姿は、まさに豊かであるべき日本の「象徴」である

 

 これは町内の飲食店に貼ってある標語 f:id:faimil:20161228170239j:image

こんな標語があること自体、この地に来なければ分からない

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 地表に散在する空地、これを「震災のかさぶた」と名付けてみた――「かさぶた」とは、やがて肉が盛り上がり、回復していく傷のことである

 

そして、式典の第二部・奉納演芸では、私達夫婦をここまで導いてきたもの――花童登場!となるのだが、それは次のブログにて

初見!花童 ~ 漱石と娘おどり

YouTubeで盆踊り動画を漁っていたら、不思議な画像(サムネイル)が出てきた

「日本の伝統を受け継ぐ少女達」

「日本人形が踊っている」

それをクリックして――ファイミルの花童時代が始まった

見つけたのは10月、一日平均3時間として……延べ100時間はYouTubeの花童を観ていることになる

今月、やっと熊本に行く段取りがついた。ついに本物の花童に会える

そうこうしている中、妻がネットで見つけた

あれ?あかねちゃんとゆりあちゃんが東京に来るよ

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舞台『アイラブくまもと 漱石の四年三ヵ月』

漱石は教師として二度地方に赴任した。最初の地、松山は後に『坊っちゃん』の舞台となる。そして次の熊本を経てイギリスに留学する

『三四郎』は熊本出身、熊本から上京する列車のシーンで物語は始まる。漱石が熊本を憎からず(?)思っていたことはここからも伺える。

そして漱石の新婚生活はここで始まり、門下生の白眉、寒月君こと寺田寅彦と出会ったのもこの地である 

その漱石の熊本時代を題材としたのがこの舞台。震災復興イベントとして熊本と東京で上演された

その劇中、花童の年長さん、あかねちゃんとゆりあちゃんが娘おどりを披露する

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上演中、今か今かと登場を待ちわびる。そして暗転、踊りのシーン……

色違いの着物を清楚に着こなしたあかねちゃん・ゆりあちゃんが現れる

うわあ~、と会場から声が洩れる……

とにかく、綺麗なのである。YouTubeの動画と実物は違う、それは想像していたけれど……ここまで違うとは思わなかった

とにかく……綺麗なのである

演目が『肥後の通り名』であることは後で知った。熊本所縁の曲をメドレーにした十数分の大作である。言うまでもなく『おてもやん』は入っている。キンキラキンのガネマサどんに東雲のストライキ……え?と思って調べたら、「何をくよくよ川端柳~♪」の東雲節(ストライキ節)は熊本由来の唄だった

その中で、さすがにこれは違う。「沖の暗いのに白帆が見ゆる、あれは紀ノ国みかん船」――このメドレーに熊本とは無縁の『かっぽれ』が入っていた(なお、これについては明治期に熊本で流行った娘歌舞伎でかっぽれが演じられていた、ということを、後日花童ファンの先輩から伺った)

私は花童の踊るかっぽれが好きである。かっぽれは言わば男踊り、シナが少ない。その曲中、胸の前でくるくると手のひらを廻す振り付けが、女の子らしくて実に愛らしい

考えて見れば、この曲は蜜柑と木材で巨万の富を得た文左衛門が遊郭で金にあかせて豪遊した、という故事がベース、お座敷の戯れ唄、元は品の良いネタではない

ところが、花童のふたりがこれを踊る時、そこには得も言われぬ「清潔感」がある

可憐、繊細、軽やか、優美……どんな言葉で誉めても構わないけれど、私の頭に浮かんだ二文字は「清潔」だった。

この娘達が精進を重ね、身に付けた技量。そして少女ゆえに持ち得る清潔感。それが花童の真髄である

舞台は途中、15分の休憩が入る。「いや~綺麗だったね」「う~ん、YouTubeと違うね、生は凄いね」妻とふたり、出てくるのは感嘆符ばかり――と、隣の席のおばさんがアメをくれた

妻とそのおばさんの会話を聞いていると――なんとこの人、ゆりあちゃんの大叔母さんだった

大震災の直後、落ち着かない熊本を離れて、ゆりあちゃんはこの大叔母さんの家に居たらしい。それも私達と同じ千葉県

熊本中心で活動する花童、東京に来るとなれば、首都圏の身内が駆けつけるだろうな、とは思っていたけれど……まさか隣にいたとはね

何だか想像がつかないのである……家に帰ると、花童の娘が居て、食卓で普通にご飯を(煮込みハンバーグか何かを)食べている――それはどんな感じがするのだろう。何しろ私の知る花童は、まだYouTubeの中だけ、仮想現実のようなものなのだ

大叔母さんに、遠慮がちに聞いてみた「YouTubeでは、もうちょっとぽっちゃりして見えたけど、少し痩せたんでしょうか」

「中学生になって、ほっそりしたかしら……でもよく食べる子ですよ」

ああ、やっぱり……って、こらこら(汗)

 

終演後、出演者の見送りを受けて会場を後にする。花童の二人は主演の浜畑賢吉さんの隣に立っている。その姿はまるで、浜畑さんが可愛がる親戚のお嬢さんのようだった

「凄く綺麗だった、見惚れたよ」声を掛けると、はにかんだ笑顔を見せた。舞台を降りると、ホントに普通の娘さん。私もまた、自慢の姪っ子の舞台を見に来たような、満ち足りた気分になった

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まだ自分で撮った写真がないので、これは絵はがきの画像。今週やっと熊本に乗り込む。私のブログにも華やかな写真が追加されることだろう

 

倦まずに精進を続けていれば、いつか神が降りて来る――例えば芸能の世界とは、そういうものなのではないか

この娘達の清々しい踊りを観ていると、そんな思いが胸に浮かんでくるのである