水前寺公園 清水でタンタン♪
熊本の地名は元は「隈本」。清正公(せいしょうこう)さん――この地では加藤清正をこう呼ぶ――が、もっとカッコイイ地名がいいや、ということで「熊」の字になった
隈本の語源は幾つかあるが、一説では「曲がりくねった川のあるところ」であるらしい。つまり、くまもととは、水が豊かな土地、という意味である――
24日、予定は夕方の湧々座のみ。そのあと空港に走って羽田に戻る。まず城彩苑の駐車場を確保して……さてどうしよう
チンチンチンと電車に揺られて公園前へ。水路の脇を入園口へと辿る。その水路を覗き込んで驚いた。水がとてつもなく澄んでいる
悠然と泳ぐ鯉に翳りを与えるのは水紋のみ。下水の濁りを想像していたので呆気に取られる。前日の江津湖でも思ったけど、隈本はホントに水清き土地である
水前寺公園・成趣園の樹木が見えてくよく見ると くまモンもお出迎え(笑)
ああ、ここだよ!この風景をバックに花童が踊っていた一昨年のYouTube動画では粉雪の舞う中、くるみちゃんとあやのちゃんが優雅に扇を揺らして踊っていた。そして背景を白い鳥が何羽も横切った
園内の能楽堂。戸板の奥を覗き込むと、松の背景図が見えた
花童は下手の渡り廊下から登場し、この松の舞台で踊っていた。ああ、生で観たいなあ
池の水はあくまで清澄、鯉もろとも飲んでみたい
水前寺公園 清水でタンタン♪ 口ずさんでみる
突然、バサバサと羽音。水鳥が先を争うように水面すれすれを飛んでいく――対岸には鯉に餌を撒いているアベック。その餌を目指して特攻しているのだ
正面から見てみたいな――売店で餌(麸)を仕入れて水辺でばらまいてみると
来た!
来た来た~!
シュパパパ~
阿鼻叫喚
こちらはアオサギ、お大尽風情で乙に澄ましている。スマホを構えてソロリソロリ
逃げられた
公園内のお土産店
こんな本を見つけた
パラパラめくると『牛深ハイヤ』の由来が載っている。異郷で地元出版の本を探すのが好きなタチなので、買おうと店員さんを探すと――花童の絵はがきが貼ってあるのが眼に留まった。出てきたおばさん(ここの店主さん)に花童の話題を振ると、俄然話が盛り上がった――「写真あるからあげますよ」引き出しの中をごそごそして、見つかった写真――それは奇しくも、今はメンバーにいないあやのちゃん、東島姉妹の生写真だった。探してくれている間、ふと後ろの棚を振り向くと、カワイイ娘さんと目があったので……連れて帰った
おてもやん
「玄宅寺って、この近くですか?」妻が聞くと「すぐ裏ですよ」
行ってみた
玄宅寺では花童の月例舞踊会が開催されている。でも木曜日なのでなかなか観れそうにない
ああ~熊本に住んでいればなぁ
この日、何度目かのため息……
わくわくこわらべ ~ 熊本城・城彩苑にて
23日、益城町での奉納踊りの後、熊本城に直行――桜の馬場・城彩苑「湧々座《わくわくざ)」――ここで花童の定期公演が開催される
次の24日も続けて観たので、記憶も写真も2日分ゴッチャである(笑)
ここは歴史文化体験施設なので、演目も熊本所縁のものが選ばれている。3部構成で2部にはタレントさんによる歴史紹介コントが組み込まれている
まずは『肥後のタンタン節』――こわらべ達が鼓を持って登場する
小さな身体で鼓を構える姿が凛々しくて、私の大のお気に入りシーン
そしてくるみちゃん(月若さん)が扇を優雅に舞わせて登場する
こわらべは途中、鼓を提灯に――
そして扇に持ち替える
熊本の名所・名物を「タンタン」の音で軽快に紹介していく――ステージの導入部にぴったりの曲である
『おいでまっせ』――これは わらべ歌「あんたがたどこさ」の大人版のような曲。歌詞に先場山の狸が出てくる
きみかちゃんの
ポンポコたぬき
と――上手端で ゆうあちゃんがピース・サイン! え?そんな日本舞踊ある?
と驚いてたら……かなちゃんとれいなちゃんも両手ピース!?
歌詞を良く聞くと、これは洗場川の蝦(ザリガニ?)のポーズ。ピースじゃなくてハサミだった
『おてもやん』――言わずと知れた熊本の代表作。こわらべのYouTubeでも名作が多い
気の良い娘・おてもやんの恋の苦悩?――こわらベが演じると何とも微笑ましい
MCで花童のメンバーは7歳から20歳~と紹介され――そうか、くるみちゃん(月若さん)も二十歳になったのか、と感慨深かった
実物を見たのはこの日が初めてなんだけどね(汗)――YouTubeで6年分を追っているから初見な感じがしないのである
みことちゃん・あやかちゃんはここでもコンビの演目
そして月若さんとトリオで
こわらべの娘たちの日本舞踊への情熱は、くるみさんに憧れることから始まった
このか細い背中――この娘たちの眼には、さぞかし広く大きく見えていることだろう
『くまもと音頭』――これはタンタンとは逆にエンディング曲の定番
こわらべのラインダンス(?)――手に持つのは春は桜、秋は紅葉の枝
湧々座では、2部の最後にMC・熊八どんの指導が入る「くまもと音頭ではバックスクリーンに歌詞が映りますので、皆さん元気に歌いましょう」――YouTubeで耳慣れた曲、ホントに元気に歌ったら、熊八どんに褒められた(笑)
この熊八どん、明るいのはもちろんのこと、実にフレンドリーな人で、湧々座のことなど詳しく教えてくれて、玄関まで送ってくれた
2日目は大工の源さんになっていたこの日も終演後、玄関まで送ってくれたので「熊八どん、2日間お世話になりました」とお礼を言うと「今は源さんです」――二人してにっこり笑った
さて、熊八どんの采配で終演後に記念写真を撮ってもらった
実はこの写真にはファイミル夫妻も撮っていた――両サイドに座った姿は……まるで花童の脇の狛犬のようであった
もう一枚「おいでまっせ!」のポーズ
YouTubeでは首を横に傾げる仕草だったのが、今は両手を広げる、よりアクションの大きなボーズになっているらしい
これ、良く見ると
……少しはお愛想しなさいよ(笑)
でも私は――この表情に「清潔」を感じるのである。純真とか無垢とか情緒的な言葉よりも、私は清潔という言葉を使いたい
この娘がいつか私の前で笑ったら、それはこの娘が本心から寛いでいる時である
奉納、花童 ~ 益城町にて
舞踏とは多かれ少なかれ「神事」としての要素を含んでいる
日々の精進を積み重ねた花童の踊りには、時として「神が降りているのかな」と思わせることがある
12月23日、益城町にて天皇誕生日祝賀・震災復興祈願イベント
やっと叶った。初めて生で観る こわらべ……日本人形が踊っている
前回、東京の舞台で初めて あかねちゃん・ゆりあちゃんの娘踊りを観た、あまりのキレイさに驚いた。だから花童が大挙して眼前に現れたら、卒倒してしまうんじゃないか、と思った w
まずはくるみちゃん(月若さん)とゆりあちゃんが登場
月若さん、さすがに踊りの線が美しかった。全身が舞踊の鍛錬によって練り込まれている感じがする
そして こわらべ五花撰――かな・ゆうあ・れいな・きみか・すずが登場する
花童定番、熊本名物『おてもやん』五者五様の「おてもやん」――その個性を観るのも愉しい
花誠先生は敢えてこの娘たちの癖を「矯正」していないのではないかと思う。同じ振り付けを習っていながら、この娘たちの踊りは一人ひとりに個性がある。ラインダンスのように画一的に揃えてしまってはつまらない。「みんな違って、みんないい」というのは日本人の持つ美意識の特長かな、とも思う
みことちゃん・あやかちゃんの『因幡大黒舞』 この二人は遅れてきたヒロイン。今、懸命に花童の階段を駆け上がろうとしている。この衣装と踊りが意外と似合っていて、あやかちゃんが美少年(?)に見えた
『阿波踊り』――本場徳島で見たことがあるので、この手捌き・足捌きには違和感があった。でも実際にステージで観ると、目まぐるしく変化するフォーメーションが面白い
そして、この奴ダコポーズが愛らしい
阿波踊り、或いは秋田県の西馬音内(にしもない)盆踊りなど、日本の踊りには、顔を隠すコスチュームも多い表情を見せないことで神秘性を高める。これも日本人が好む舞踊の特長、霊異を感じさせる演出かな、と思う
でも、YouTubeで百時間余り花童を観ている私にとっては、一人ひとりの個性――体格はもとより、腰の低さ・背の屈め方で、誰が誰だか何となく見当が付く
舞踊とは神事――祈りである、今回の震災復興イベントから、その例を拾ってみた。
これはメドレー『肥後の通り名』にも入っている曲……YouTubeで調べてみたが曲名は分からなかった
石は吊って持つ吊って持つ石は~♪
天守櫓の石垣見上げ~♪
……この石垣を積み上げるような振り付け、今見ると、熊本城の武者返しの復活を思わせる
そしてラストのー曲は『365歩のマーチ』――言わずと知れた水前寺清子さんの名曲
熊本と言えば水前寺
――今の熊本にピッタリの、そして花童の娘たちにピッタリの 「CheerUp (元気づける)ソング」だなあ、と思う
あなたの付けた足跡にゃ~ ♪
キレイな花が咲くでしょう♪
腕を振って足を上げてワンツーワンツー♪
休まないで歩け~♪
江津湖から益城町へ~震災のかさぶた
とにかくもう、花童が観たくて観たくて、計画した九州旅行。22日は始発電車で羽田へ向かい、福岡空港からレンタカーで佐賀県へ――妻の積年の望みだった有田焼の本場を見るためだ。その夜の内に熊本市内へ……九州を少しばかり甘くみていた。遠かった(汗)
翌日、10時過ぎにホテルを出発。花童が出演する益城町でのイベントは14時から。その間、何の目的もない。
ルートの途中に江津湖があるので寄ってみた
ついでに、江津湖音頭も踊ってみた
ここは市民の憩いの公園になっていて――
スワンボートならぬ、くまモンボート
とにかく、水がきれいだった。上流から流れ込む他に、湖底からの湧き水も多いらしい。都会に近い公園で、水がこれ程澄んでいる場所は他に知らない
野鳥の楽園。野鳥観察の会が活動していた
この鳥(名前は)何ですか?とその内の一人に尋ねると
大きなのがアオサギ、小さいのがコサギですよ。ほら、足先が黄色いでしょ、それがシラサギとの違いです――説明しながら、幸せそうな笑顔w
ああ、天下太平である……寒かったけど
そして――これに気づく
盛り上がった遊歩道、芝生の亀裂
歪んだ堤、立ち入り禁止のテープ
ああ、震災があったんだ……
震災直後、銀座のくまもと館には行った。でも、私の日常に震災の影はない
益城町へと向かう、沿線に目立って更地が増えてくる
あ!ましきまち……ニュースで何度も耳にした激震地じゃないか
目的地に近づくにつれ、車窓の景色に違和感がつのる。街並みがどことなく、歪んでいるのである
折れた家屋
傾いた祠
崩れ落ちた壁、竹の骨材が露になっている
次々と現れる更地。地表に出来たかさぶたのようだ
見上げると、クレーンの鉄柱が斜めに何本もニョキリと立っていた
目的地、益城町文化会館。早く着いたので裏手に廻ってみた
ホールの裏手階段も崩れている
このホールで開催されたイベント『天皇誕生日奉祝式典 被災地ご訪問感謝の集い』
受付で記名しているとテレビ局のレポーターに声を掛けられた
「どちらからおいでですか?」「このような慶賀の式典に興味はおありですか?」
「いえ、私は花童を観に来ただけで……他には何も(考えてなかったです)」
レポーターはそのままお辞儀して去っていった
天皇誕生日と震災復興を兼ねたイベント。舞台上に居並ぶ来賓各位、そして祝辞
その中で、地元益城町の女性が舞台袖から現われ、スピーチの壇上に立った
――震災後、先行きに希望のない避難所生活を送る中、天皇陛下が慰問に来られると聞いた……当日、空を見上げていると、やがて小さな点が現れた。天皇陛下が乗ったヘリコプターだ。その点が次第に大きくなってくる。それを見たとき……ああ、私はもう大丈夫だ、と思った――
災害とは、限られた一部の人にのみもたらされる。被災した人はたまたま運が悪かった人、「災難」の人である。熊本県内だけで見ても、被災者の人口比は僅かだろう。遠く離れた地に住んでいれば現実味は薄い
災難に遭った一部の不運な人々に対し、社会がどれだけ同情の想いを寄せているか――それがコミュニティとしての豊かさ、民度の高さのバロメーターである
天皇は国民の幸せを真摯に祈り続けている人である――不運な人に思いを寄せ、助け合える社会を理想とするのであれば、天皇の姿は、まさに豊かであるべき日本の「象徴」である
これは町内の飲食店に貼ってある標語
こんな標語があること自体、この地に来なければ分からない
地表に散在する空地、これを「震災のかさぶた」と名付けてみた――「かさぶた」とは、やがて肉が盛り上がり、回復していく傷のことである
そして、式典の第二部・奉納演芸では、私達夫婦をここまで導いてきたもの――花童登場!となるのだが、それは次のブログにて
初見!花童 ~ 漱石と娘おどり
YouTubeで盆踊り動画を漁っていたら、不思議な画像(サムネイル)が出てきた
「日本の伝統を受け継ぐ少女達」
「日本人形が踊っている」
それをクリックして――ファイミルの花童時代が始まった
見つけたのは10月、一日平均3時間として……延べ100時間はYouTubeの花童を観ていることになる
今月、やっと熊本に行く段取りがついた。ついに本物の花童に会える
そうこうしている中、妻がネットで見つけた
あれ?あかねちゃんとゆりあちゃんが東京に来るよ
舞台『アイラブくまもと 漱石の四年三ヵ月』
漱石は教師として二度地方に赴任した。最初の地、松山は後に『坊っちゃん』の舞台となる。そして次の熊本を経てイギリスに留学する
『三四郎』は熊本出身、熊本から上京する列車のシーンで物語は始まる。漱石が熊本を憎からず(?)思っていたことはここからも伺える。
そして漱石の新婚生活はここで始まり、門下生の白眉、寒月君こと寺田寅彦と出会ったのもこの地である
その漱石の熊本時代を題材としたのがこの舞台。震災復興イベントとして熊本と東京で上演された
その劇中、花童の年長さん、あかねちゃんとゆりあちゃんが娘おどりを披露する
上演中、今か今かと登場を待ちわびる。そして暗転、踊りのシーン……
色違いの着物を清楚に着こなしたあかねちゃん・ゆりあちゃんが現れる
うわあ~、と会場から声が洩れる……
とにかく、綺麗なのである。YouTubeの動画と実物は違う、それは想像していたけれど……ここまで違うとは思わなかった
とにかく……綺麗なのである
演目が『肥後の通り名』であることは後で知った。熊本所縁の曲をメドレーにした十数分の大作である。言うまでもなく『おてもやん』は入っている。キンキラキンのガネマサどんに東雲のストライキ……え?と思って調べたら、「何をくよくよ川端柳~♪」の東雲節(ストライキ節)は熊本由来の唄だった
その中で、さすがにこれは違う。「沖の暗いのに白帆が見ゆる、あれは紀ノ国みかん船」――このメドレーに熊本とは無縁の『かっぽれ』が入っていた(なお、これについては明治期に熊本で流行った娘歌舞伎でかっぽれが演じられていた、ということを、後日花童ファンの先輩から伺った)
私は花童の踊るかっぽれが好きである。かっぽれは言わば男踊り、シナが少ない。その曲中、胸の前でくるくると手のひらを廻す振り付けが、女の子らしくて実に愛らしい
考えて見れば、この曲は蜜柑と木材で巨万の富を得た文左衛門が遊郭で金にあかせて豪遊した、という故事がベース、お座敷の戯れ唄、元は品の良いネタではない
ところが、花童のふたりがこれを踊る時、そこには得も言われぬ「清潔感」がある
可憐、繊細、軽やか、優美……どんな言葉で誉めても構わないけれど、私の頭に浮かんだ二文字は「清潔」だった。
この娘達が精進を重ね、身に付けた技量。そして少女ゆえに持ち得る清潔感。それが花童の真髄である
舞台は途中、15分の休憩が入る。「いや~綺麗だったね」「う~ん、YouTubeと違うね、生は凄いね」妻とふたり、出てくるのは感嘆符ばかり――と、隣の席のおばさんがアメをくれた
妻とそのおばさんの会話を聞いていると――なんとこの人、ゆりあちゃんの大叔母さんだった
大震災の直後、落ち着かない熊本を離れて、ゆりあちゃんはこの大叔母さんの家に居たらしい。それも私達と同じ千葉県
熊本中心で活動する花童、東京に来るとなれば、首都圏の身内が駆けつけるだろうな、とは思っていたけれど……まさか隣にいたとはね
何だか想像がつかないのである……家に帰ると、花童の娘が居て、食卓で普通にご飯を(煮込みハンバーグか何かを)食べている――それはどんな感じがするのだろう。何しろ私の知る花童は、まだYouTubeの中だけ、仮想現実のようなものなのだ
大叔母さんに、遠慮がちに聞いてみた「YouTubeでは、もうちょっとぽっちゃりして見えたけど、少し痩せたんでしょうか」
「中学生になって、ほっそりしたかしら……でもよく食べる子ですよ」
ああ、やっぱり……って、こらこら(汗)
終演後、出演者の見送りを受けて会場を後にする。花童の二人は主演の浜畑賢吉さんの隣に立っている。その姿はまるで、浜畑さんが可愛がる親戚のお嬢さんのようだった
「凄く綺麗だった、見惚れたよ」声を掛けると、はにかんだ笑顔を見せた。舞台を降りると、ホントに普通の娘さん。私もまた、自慢の姪っ子の舞台を見に来たような、満ち足りた気分になった
まだ自分で撮った写真がないので、これは絵はがきの画像。今週やっと熊本に乗り込む。私のブログにも華やかな写真が追加されることだろう
倦まずに精進を続けていれば、いつか神が降りて来る――例えば芸能の世界とは、そういうものなのではないか
この娘達の清々しい踊りを観ていると、そんな思いが胸に浮かんでくるのである
お東さんとお西さん
滅多にないのだけれど、京都で会合に出席した。一回目は8月だった。同僚の車で京都駅まで移動中「ここで停めて……オレの本山なんだ」そして一人で参拝した――そこは真宗大谷派、京風に言うと「お東さん」、つまり東本願寺
夏バテ真っ最中、でも本堂はうっすらと冷気(霊気)があり、時折吹き込む風が涼やかである
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつ なんまん……
子どもの頃から見よう見まねで覚えたお念仏を唱える
そして今日、再び「ここで止めてよ」「ああ、本願寺ですね」
なんか、大きな旗が飾ってあるなあ、おまつりかしらん?
震災復興祈願の看板も前回と違う
イチョウのライトアップ、黄葉がきれい
イチョウの大木は滋養をたっぷりと蓄えている。生命力の象徴だ
本堂にはびっしりと椅子が並べられていた。なにかイベントでもあったのかな
最前列、椅子の前に正座して仏壇に手を合わせる。礼拝はやっぱり正座で行いたい、これからも膝が曲がる限り、私は正座する
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なむあみだぶつなんまん……
頭蓋骨を風が通り抜け、鼻の奥がスカスカする、そのままずっと座っていたい
私と同じクチだろう、やっぱり正座でなきゃ、とおばさんが座る。なんまいだ~なんまいだ~と隣から声が聞こえる
立ち上がって振り替えると、ごつい白人が3人、カメラをぶら下げてもの珍しそうに立っている
Don't photo!と言ってやろうかと思ったけど、やめた。もし有り難みの分からない者であれば、何を言っても 無駄である……
山門を潜って駅へと向かう――いくらなんでも気がついた。
ここは本願寺派――お西さんじゃないか!
ファイミルの宗教心もこんなもの。西も東も分からない
お東さんへと向かう。もう夕刻5時は過ぎている
閉まった門前で、僅かばかりの南無阿弥陀仏
振り向くとスカイツリー
……ならぬ京都タワー
こんなことを思い出した。アニメ『茄子アンダルシアの夏』の続編『茄子スーツケースの渡り鳥』――舞台は日本、栃木県。イタリアの競輪選手達が縁あって日光のお寺を訪れる。廊下を伝い、障子の開いた本堂を横切る。金襴の仏壇を「ふーん?」と眺める
そこで和尚さんの活が入る
「異国の者でも、尊きものの価値は分かろう。手を合わせなさい」
20代後半、イギリスのウィンチェスター大聖堂を訪れたことがある。ジェーン・オースティンの足跡を訪ねたついでだ。何にも知らないで入って、カンパがわりでクリスマスキャロルのカセットテープを買った。売り子の金髪のお姉ちゃんが、アジアの異教徒ににっこり微笑んだ
伽藍の宏大な空間に立った時、涼やかな空気を感じ、鼻の奥がスカスカした
なにさまの おわしますかは 知らねども
かたじけなさに 涙こぼるる(西行)
神社仏閣(霊域)に惹かれる心情――この短歌ほど見事に表現した言葉を、私は知らない
盆踊りのおしまい
西新井大師で偶然見かけて始まった盆踊りブログ、いよいよ最終回
さすがに10月に入ると盆踊りの開催は少なく、どこにする?という選択肢はない
千代田区ふれあい秋まつり――盆踊りもやります、屋内だから雨天決行です――実際、土砂降りだった。やっとパーキングに駐めて――センターの駐車場が分からなかった――ずぶ濡れで区民センターに入ると
広いロビーにお年寄りがずらり、その奥まったスペースで
踊りの小さな輪、ズラリ座って横向いた、お年寄りの視線を浴びつつ……まあイベントの余興の一つというところか
それでもやっぱり「踊りたくて来た!」という人が何人かいた
イベントのスタッフジャンパーを着た女性が一人、とにかく踊りたくて持ち場を抜けてきた、という感じで輪に入ってきた。丸顔に満面の笑みが好ましかった
豊川悦司(似の男性)が幼い娘を連れて参加している。踊りが終わると直ぐにタクシーで去っていった。この親子、その後、他の会場でも見掛けることとなる――どんな人生模様の父娘なのだろう、とは余計なお世話
港区芝公園での盆踊り、これも大きなフェスティバルでの催しの一つ
この辺、駐車場は少ないし、あっても高い。ぶつくさ言いながらやっと駐めて、増上寺のイベントをぶらぶら。お寺の広間で特別公開、天井の日本画。ずらり数十枚並んだ作品の中には、えっ!というような著名な画家のものもあったらしい――えっ!と言ったのは妻、私は知らない――ぼんやり見惚れていたら、踊りの開始に遅れた
ここから会場の芝公園まで、凄く遠かった。この界隈、広すぎるんだよ
直前まで大雨、開始時刻には上がっていたけれど
地面はぬかるみ。申し訳程度にダンボールが敷いてあったけど、もうドロドロ、みんな水たまりをピョコピョコ避けながら踊る
それでも盆踊ラーは挫けない。着物の人は大変だったろうに、ホントに踊りたいんだね
いつもの盆踊らーの内、村田くん(村田雄浩さん似)――いつも着物の着こなしが決まっていて、腰に提げる小物なんかも粋である――この日は裾の端折り方が堂に入っていて「よ、イナセだね!」と言いたい感じ
途中、太鼓の演技、幟には『助六太鼓』
うーん、江戸前だねえ
そして、べったら祭り――平日だけどその年最後の盆踊り。東京中の盆踊らーが集まるらしい
職場から駆けつけた頃は、プロの歌い手さんで生歌踊り
車両を通行止めして路上で踊る。交差点まではみ出す程の盛況ぶり。とは言え、やっぱり平日、仕事あけはつらいよ。知らない曲も多いし、べったら音頭も覚えていない
街灯に凭れてぼんやりと踊りを眺める。お馴染みの盆踊らーがちらほら……と、無気力姉妹だ!穴八幡以来……なんだか懐かしい。そして揃いの黄色いハッピの中に、プラモさん発見!私の頭は無気力祭り(笑)
一方、ここを先途とばかりに踊り続ける妻。下手くそなりに、何やらコナレ感が出てきた。通ったもんなあ
盆踊りタイムも終わって夜店見物、ベったら漬けを試食して、あとは散策がてら、地下鉄駅まで歩く。燃料切れで途中、焼鳥屋に立ち寄る
祭りの喧騒から離れた場所、この界隈は閑散としていて、外人(アジア人)の女の子がポツンと店番をしていた。壁には古い邦画のポスターが貼られている。よくある「昭和ノスタルジィ」の演出だ。
ホッピーを飲みながら、つらつら眺める寅さんのポスター
「東京市」の情緒を求めて各地を巡った盆踊り。結果として――葛飾、墨田が良かったなあ、と思う。ああ、帝釈天で寅さん音頭を踊りたい……
東京は西から近代化したらしい。荷風さんは日本の情緒が失なわれていくのを嫌って、東へ東へと彷徨った。そして墨東綺譚を書いた。最後は江戸川を越えて千葉県の市川に居を構えた。
盆踊りをきっかけに、私は東京都の西と東を横断した。東京はなんと大きな「地域」の集合体なのだろうと思う。東西でずいぶんとキャラが違う。別の街なのだ
そして私はなんとなく、どこかアカ抜けない「墨東?」が好きである